広告会社にとってのテクノロジー



 「アドテクノロジー」とはいったいどういうものか、その実態が認識できているマネージメント層はトラディショナルな広告会社にはほとんどいないように思う。

 テクノロジーといってもナノテクノロジーとかではないので、基本IT、特にインターネットの配信技術や、ブラウザをユーザーインターフェイスにしたオペレーション技術である。従来ネット広告をはじめとするアドサーバー技術など、主にメディアやアドネットワークを運営するメディアレップが駆使するものなので、日本ではエージェンシーが自らアドテクノロジーを使うという意識が今まであまりなかった。しかし欧米ではクライアントがアドテクノロジーを使う。当然エージェンシーがしっかり使えなければクライアントサービスができない。その実態を知って、急に「テクノロジー」と言い出したが、いずれにしてもITリテラシーが乏しい人にはこの実態が何かを想像することができない。


 基本的にアドテクノロジーは3つに大別できる。

   ・広告効果のトラッキング技術
   ・Web広告配信&表現技術
   ・オペレーションサポート技術

 いずれも作業効率を上げるためだけでなく、従来人間技では全く不可能だったことを実現している。トラッキング技術は、リアルタイムにユーザーのレスポンスを把握することで、いわゆる「売り」にどの程度繋がったかを知ることで、企業マーケティングの全体最適を促すものだ。
またWeb広告の配信と表現技術は、ターゲットユーザーひとりひとりに個別のメッセージ配信を実現したり、インタラクションによって従来メディアが決してできなかったユーザーの自己関与(エンゲージメント)を創り出すものだ。

 特にこの技術の知見の上にクリエイティブが展開することが期待されている。「クリエイティブとテクノロジーの融合」は言葉でいうほど簡単ではないが、欧米ではこれが実践されている。従来できなかった表現したいものがあって、それをテクノロジーで実現させる。あるいはテクノロジーに精通しているからこそ出てくるアイディア、そうした新たな価値創造が次世代広告コミュニケーションの中核を成す。


 実は広告業は情報産業のわりには本格的なITによるビジネス革命とは縁遠いところにいた。作業効率アップだけでなく、ビジネスの本質部分にテクノロジーが関わってきていることを認識できるかどうか、(google的広告革命の本質が理解できるかどうか)、広告会社経営の試金石といえる。