先日リリースされた野村総研さんの「ソーシャルCRMのロードマップ」について、詳しいお話をわざわざNRI情報技術本部技術調査部主任研究員の亀津さんに解説していただいた。亀津さん有難うございました。
この「ソーシャルCRMのロードマップ」という資料は、野村総研さんのITロードマップセミナーSPRING2010のなかで発表された「ソーシャルメディア時代の顧客リレーションの新展開」というプレゼンテーションのなかにある。このセミナーに参加された方も多いだろう。
まず、興味深いのは、「ソーシャルメディアのオープン化のトレンド」
「ライフストリームの共有が消費者の新たなメディア接触の入り口」という表題のページで、「消費者のネット利用のスタイルが変わる」と予見している。
つまり、これまでのAISASモデルの真ん中のSearchがなくなっている。「ソーシャルフィルタリング」(ツイッターでいえばフォローしている人のツイートで情報を得て、認知と興味関心をもち、そのままリツイートというかたちで「ソーシャルリコメンデーション」が行なわれる。
フォローしている人のツイートから情報をキャッチアップして、購買行動に繋がるが、ここではリツイートという情報シェアが先で、アクションがその後という面白い現象もありそうだ。フォロー⇒インタレスト⇒リツイート⇒アクション⇒シェア だとすると、FIRAS かな?(これはNRIさんの資料ではなく、ベムの感想です。)
いずれにしても、「これまでのWebページを前提とした顧客導線とは異なる流れが登場する。」としている。
また「ツイッターやフェイスブックのような新しいソーシャルメディアはデータをオープン化している。蓄積された消費者のライフストリームデータを利用する周辺ビジネスが拡大するとともに、これまで企業がリーチできなかった消費者の声が分析可能になった。」
特にWebページ単位のブログと異なり、APIを介してのデータ取得・操作が容易であることを指摘している。
そして、今後、ツイッターやフェイスブックのような新しいユーザーの流れが、従来のWebサイトと連動する。Twitter 「@anywhere」やFacebook 「Like」ボタンなどによって、ソーシャルメディアが共有している「関心のネットワーク」が新たに分析可能となるということだ。つまり「人のつながり」から「関心のネットワーク」へ、ソーシャルグラフの定義が拡張するとしている。
次に、「ソーシャルメディアがもたらすCRMモデルの変化」について語られている。ここが今回NRIさんのレポートのへその部分だろう。
「ソーシャルメディアのマーケティング活用の核」はCRMにあるということだ。
「従来のCRMが主眼にしてきた既存顧客に加え、顧客になっていない消費者の声を分析できるようになったため、CRMモデル全体に様々な変化が生じる。」としている。
具体的に図に表記されているのは・・・
・顧客戦略・・・・・・・・・・・・・・・ソーシャルメディア戦略
・顧客インサイト(顧客理解・識別)・・・・ソーシャルインテリジェンス(消費者理解)
・マーケティング・・・・・・・・・・・・ソーシャルメディアモニタリング
・セールス・・・・・・・・・・・・・・・セールス管理へのソーシャルメディア追加
・サービス・・・・・・・・・・・・・・ソーシャルメディア経由のカスタマーサービス
と、CRMの全体構造をささえている要素がそれぞれ変化をきたすということだ。
ソーシャルメディアモニタリングに関しては、リスニングプラットフォームが登場する。組織的にソーシャルメディアを活用するためには、会社の誰かがその個人のスキルで対応するのではなく、会社として装置化しなければならない。
また、まずはソーシャルメディアで自社及び競合のサービスについての評判の分析をすることが肝心だ。
そして、企業に向けられた消費者の問い合わせ、質問への対応への応用していくことが求められる。
さらに、最終的には企業からのメッセージの発信にソーシャルメディアを利用していくという順番(プロセス)が良いのでは?としている。
こうした考え方をベースに、メディア環境、ユーザーの進化を想定して、できているのが「ソーシャルCRMのロードマップ」ということになる。
この資料が公開されてから、「もっと早い時期にこうなるのでは?」という反応が多いらしい。もちろん早く対応する企業もどんどんでてくるであろうが、大手企業が組織的対応で臨む時期はグラデーションがあるもののこのロードマップの各々の矢印のなかなのではないかというのが亀津さんのご意見だ。
私の感想で言うと、ソーシャルメディアを企業マーケティングサイドから見たときに、これを『CRM革命』の要素だと切り取るところが「実に頭良し」という感じだ。
今はツイッターを熱っぽく語る人が、イノベーター、アーリーアダプター中心にいっぱいいて、のめり込み方もヘビーだが、いずれ普通のプラットフォームになっていく、その時に「話題のツイッターを使ったキャンペーン」ということではなく、一番煎じでも二番煎じでもない、地に足のついた活用法を確立することが重要であると思う。
そのために、ソーシャルメディア単独での利用ではなく、様々な既存のチャネル(電話・メール、Web・・・)との統合・全体最適が必要だと、NRIさんも話を締めている。
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