今年も業界予測を書いてみます。デジタルマーケティングに関わる業界のことです。今年は7つの出来事に整理してみました。
①DMP(データ・マネージメント・プラットフォーム)が始動する年
DMPとは何かが明確になる年と言い換えてもいいだろう。
オーディエンスデータセラーとしてDMPと、企業が顧客と見込み顧客データを格納し、分析するプライベートDMPと2つのDMPがあるが、ビッグデータの時代のマーケティングの本筋は、プライベートDMPの構築である。
ビッグデータという概念のなかにおけるDMPの位置づけがはっきりする年、それが2013年だろう。
企業、ブランドごとに個々のユーザーにどんな意味や価値をもたせてセグメントするかは個々の企業でしかできない。有効なセグメントで、コミュニケーションだけでなくサービスを差し分ける。これが次世代マーケティングである。
そのためにも、企業の持つファーストパーティデータと、サードパーティデータを有効にクロスさせてみる必要がある。プライベートDMPを構築するためにも、データセラーとしてのDMPを活用することが肝心だ。
ビッグデータ格納とプライベートDMP構築の前段として、CRMと広告を繋ぐ試みが、いろんなところで始まるだろう。
②動画DSPが始まる年
改めて動画のネット広告が活性化するだろう。
特にスマホへの動画配信が急速に市場を形成する年になる。
PCの動画枠インベントリーも増えるだろうが、スマホの動画の方がより効果的との見方も出てくることによって、スマホ枠が開発されインベントリーも増える。
インプレッション効果を購買行動と紐付けた調査も可能になるはずだ。
TVCMとは違うデジタル広告用の動画CM素材を作ろうという動きが始まる年にもなるかもしれない。
日本でもEコマースの業界が、動画に注目し始める年になるだろう。
既に多くの実績が米国で出ている。
TV通販の効果減退が、こうした流れを活性化するはずだ。
③オーディエンスデータプランニングが試行される年
特にネット広告のメディアプランニングでは、「枠」から「人」の大きなパラダイムシフトで大変革を求められる。
例えば、メディアレップには大手代理店ですら管理できない広告メニューデータベースがある。万の数に及ぶネット広告の広告メニュー情報をアップデートしているのが、メディアレップの最大の価値である。しかし、媒体情報がメディアプランの根幹でなくなったら・・・、クライアントのもつオーディエンスデータから組み立てることになったらどうなるか。
当然、メディアレップは「枠」のプランニングだけでなく、オーディエンスデータプランニングを志向するだろう。しかし事はそう簡単ではない。クライアントと直接、しかもかなり深くインターフェイスする必要がある。
それに、プランナーにはコミュニケーションの知見とデータ分析の知見が必要である。
ブランドのターゲットプロファイルを理解し、ファーストパーティデータをセグメントできるかどうか。これを複数のメンバーにスキル化して習得させることができる人材はそういないだろう。
米国のエージェンシートレーディングデスクのOEMでも比較的大きなシェアをもつMediaMathの管理画面上では、ブルーカイなどのDMPからカテゴライズされたオーディエンスデータを配信対象に選ぶことができる。データ料がCPM○ドルと管理画面上から買うことができる。
こうしたテクノロジーとメソッドが米国から輸入されても、実際のプランニングは容易ではない。上流でのオーディエンスデータプランニングを設計するコンサルが要る。
とはいえ、オーディエンスデータプランニングは確実に時代の要請となる。これをこすスキルは当然まだ確立していない。今年1年では到底確立というところまで行かないだろうが・・・。
④オペレーションスキルの重要さが顕在化して見える年
DSPやリスティングという入札と3PASによる配信、クッキーの一元化やコンバージョンパスデータ分析、またはソーシャルモニタリングなど、管理画面と常に向き合って適切なオペレーションを適切なタイミングで行うことがさらに重要になる。また管理画面から的確な情報を抽出することが従来にない大きな価値を生み出すことになる。
オペレーション業務をしているからこそ、読み出せる「顧客の文脈」というものがある。コンバージョンパスデータ分析もより簡易に出来るようになるだろう。ただ操作に長けていない者が扱っても、うまく「情報化」できない。ましてや自ら操作しない人たちには「文脈の発見」は出来ない。
総合代理店の人材はそれに対応できるか?
「トレーディングデスク機能をつくりました」というリリースがあちらこちらから聞こえた2012年だが、まだまだ単一のDSPしか対応しないとか、スマホだけだとか、本格的なトレーディングデスクとは言い難い。
あまり詳細は語らないが、トレーディングデスク機能の進化の方向は今年明確になるだろう。
⑤大手代理店ワンストップの流れが変わる年
新たなプレイヤーの進出と、クライアント側のスキルの試される年
ブランデッドコンテンツやユーザーサービス開発ができる新たなパートナーをゲットできるか、またどういうオリエンやディレクションができるか。
企業のマーケティングメディアがTVを中心としたペイドメディアによる「広告」であれば、広告枠を扱う広告代理店にコミュニケーション開発を依頼する妥当性は高かった。しかし、広告枠を買うことが必ずしも前提でなければ、(つまり、「広告クリエイティブ」を依頼するのではなく、「ブランデッドコンテンツ」や「情報クリエイティブ」開発を依頼するのであれば、何も広告代理店だけがパートナーではない。
むしろ、ユーザーサービス開発までが企画発想できるプレイヤーを直接やりとりする方が、発注側のスキルも高くなるし、パートナーのモラールも上がる。
某外資デジタルエージェンシーの日本進出の理由のひとつが、有力広告主がデジタルクリエイティブファームとの直接取引を志向し始めたことを上げている。
しかし、広告主側にもデジタルのプロ集団と直接インターフェイスするためには必要なことも多い。優秀なパートナーは、優秀なだけにハンドリングが必ずしも容易ではない。
そもそも広告主企業側がコミュニケーション開発のプロセスの変革を実行しなければいけない。パートナーを新しくするだけではうまく行かない。
オウンドメディアとは企業自身のメディアだ。これを開発する知見は誰よりも広告主自身になければいけないし、意味がない。
急速は対応には、テンポラリーでもスペシャリスト人材の登用が必要だろう。
また、急速な対応が次世代のマーケティングをリードするには必須条件となっている。
⑥マス広告を含めたマーケティングROI最適化の試みが始まる年
オンラインのアトリビューションは昨年のバズワードであった。しかしまだ本格的に第三者配信サーバーを導入してコンバージョンパスデータを把握し、かつリスティング広告のキーワード単位の入札価格やディスプレイ広告のコストデータをしっかり捕捉して、再配分のために活用している企業はほとんどないと言っていい。コンバージョンパスデータには、マーケターとしては実に興味深いデータが満載されているだろう。しかし、マーケティングコストの最適化のためには、これをリアロケーションに結びつけなくてはならない。
オンラインマーケティング企業にとって、アトリビューションを志向することは当然のこととなるだろう。
また、マスマーケティング企業でも、広告投資の最適化に対するトライが始まるだろう。マス広告を含むすべてのマーケティング投資の最適化について予測モデルを完成させるのは容易ではない。
しかし、こうした最適化の実現性は従来よりはるかに高く、かかるコストははるかに安くなっている。
多額なマーケティングコストを使っている企業ほど、こうしたトライによって得るものは実に大きい。
その意味でも、目的変数である商品の売上げと相関するKPIをネット上に創出できた企業のチャンスは大きいだろう。
さらに、Webサイトやネット広告配信によって測定できるデータは、ネットの最適化にとどまることなく、マーケティング活動全体の最適化に資することになる。説明変数として捉えることが難しい「クリエイティブ」についても示唆を得ることができるだろう。
⑦「どこに頼むか」から「誰に頼むか」がより顕著になる年
2013年は、広告主企業側のデジタルマーケティングシフトの具体的アクションが顕在化する年となるだろう。それは組織や人材、実際の取組み、メソッド、パートナーなどが新たになることでもある。ということは広告会社における「デジタルの専門性」を育成する段階は既に終わったということだ。
今現在デジタルをコアにした、または必須条件とするマーケティング施策を担わせることができる広告会社は限られているが、「出来る人材」は流動化し、再編されるだろう。
「どこに頼むか」から「誰に頼むか」はより顕著になる。コミュニケーションプランナーやクリエーターのアサインのためのコンサルが必要かもしれない。また、広告主企業のテクノロジー導入コンサルもニーズが高まるだろう。
さて、次の闘いは始まった。
当然、既存の広告業界内での闘いはもう本丸ではない。
0コメント