データドリブンな「シナリオ設計」ができる人材をつくるには




デジタルインテリジェンスがベストインクラスプロデューサーズをつくった一番の理由は、「データドリブンなシナリオ設計ができる人材育成、そのスキルセットの確立のため」である。DMP、データサイエンティスト、アドテクノロジー、データドリブン〇〇・・・、そしてデジタルマーケティング、氾濫するワードとどんどん進化するツール、しかし使いこなす人材がいないことは誰の目にも明らかだ。

さて、「データを駆使してマーケティングコミュニケーションをデザインする」という仕事ができる人材はどうやって育成できるのか。

一般的に右脳派側と左脳派側があって、これを融合するという獏とした思考は働く。しかし、データと向き合うことと、「シナリオ設計」するということには大きな文化的隔たりがあって、簡単ではない。
私は統計や数学はもちろん出来た方がいいが、ビジネスとしての実態をいろんな側面から「知っている」「イメージできる」「感覚値をもっている」という要素は「シナリオ設計」には絶対に欠かせないと考える。そうすると、まずはビジネスを理解していて仮説が立てられる人材にデータと向き合う、テクノロジーを使いこなすスキルを身につけてもらうということになりそうだが・・・。(もともと右脳派に「デジタル」「テクノロジー」「データ分析」を勉強してもらうということの方が、逆のアプローチよりまだ可能性を感じるのである。)

 ただいずれにしても文化の差を超えることはどちらからのアプローチにせよ、簡単ではないことである。

 文化とは「思考様式」「行動様式」に現れる。リアルな店頭で購買されている商品のデータを分析しているのにパソコンの中の数字しか見ていなくて、現場(店頭)に行くという思考がない(そもそも思いつかない)となると、これはもう文化の問題で、ちょっとやそっと研修だのなんだのしてもどうにかなるものではない。

 
 

 それと経験値として、マーケティング施策の企画実施経験が全くないと「打ち手」をイメージ出来ない。データを見て「ふ~ん」と感心しているだけでは全く意味がないのであって、「打ち手」を打ってみてのマーケティング活動である。(我々のやるべきことは、データから有効な変数を導き出して「KPI化」すること。そして「施策」と「KPI」をコインの裏表になるように仕掛けることである。)



 また逆に、従来のマスマーケティング(ある意味「経験の勘」の)に慣れていると確立した「パターン」がないとうまく動けない人が多い。「経験と勘」でやって来たのは、プロセスがそれなりに確立していて、その上で「経験値」があったからで、データから文脈を読み出してなんて・・・、初めてやることには脳がついていかない。

 また左脳派分析官のなかにもセンスがある人もいて、これは、僕は人間観察が得意な人、人間(消費者)に興味がある人だと思うのだが、こういう人の中には「マーケティング施策」の経験がなくても、施策の設計者に非常に価値のある「キーワード」や「コンセプト」を提示できる人がいる。

 左脳派側はむりやり「シナリオ設計」者に育てるというよりは、こうしたセンスをもっている人を探す、またはそうした感覚を育てるということが必要だろう。

 いずれにしてもマーケティングの対象となる消費者、「人」の連続的な意識、思考や行動を断片のデータから仮説でつなぎ合わせて、ストーリーにするスキルを育成するには、アナログな実生活環境を体験的な情報として持っていないといけないので、いろんな店舗にいかない人、料理しない人、クルマに乗らない人、街を見て歩かない人、いろんな業態の人と話をしない人・・・ではダメなんじゃないかという、何だか当たり前の結論にしかならない。
 ただ、仕事をしている環境に、「それだったらどこどこ行って〇〇を見てこいよ」と言ってくれる人がいるかどうかはすごく大事だ。おそらくその辺が「育成の場」になりうるかどうかだろうし、いろんな出自から集まって刺激し合い、研鑽し合う場になることも重要だろう。

 新しい「種」が生まれる時は「個体」に起こるものだ。 突然変異としての「新種」人材が生まれたら、そのスキルをある意味「純粋培養」すべく、地頭の良いまっさらな新人にDNAを引き継ぐことがひとつの考え方だとも思う。