POEを単に職務分掌ための概念にしてはいけない。


2009年にWeb研セミナーにおいて私が「3つのメディア」として考え方を紹介したことを契機に、「トリプルメディア」という概念はかなり普及したと思う。
https://www.wab.ne.jp/wab_sites/contents/115

翌2010年には拙著「トリプルメディアマーケティング」が出版された。

この本では、企業のマーケティングメディアをペイド、オウンド、アーンドの3つに整理し直して、それらを有機的に連携することを提唱した。
改めて、WebやSNSの登場で、企業のマーケティングメディアを再整理して、施策検討の幅を広げないといけないと言った訳だ。
つまり、マーケティング施策検討に「気づき」を与えるために幅広く網羅するためにPOEの概念を使うのである。そしてその中から検討すべき施策があれば、それらを繋ぐことが重要である。何も全部やれということではない。だからそれらの施策の企画実施には出来れば同じ人、同じチームが携わる(ディレクションする)方がよい。

時々クライアントで目にする資料にPOEを縦軸に、潜在層施策からリテンション施策までをヨコ軸にしたマトリックスがあってそれぞれの箱ごとに施策と職務分掌が記入されていることがあるが、このマトリックスをそのまま組織編成という名のもとに分断してしまうことがあるようだ。




私が提唱したのは、POEの輪が3つあるとして3つが重なるところにピンを打ってバラバラにならないようにしようという考えである。POEは施策検討の網羅性を担保するために行うのであって、POEに担当者を分けることを必然とはしていない。



 POEを職務分掌のための概念にしないほうがいいのだ。逆にPOEを俯瞰してコントロールできる人材が育たない。

そうは言っても大きな企業では、やることが膨大で役割分担しないといけない。

しかし、機能的な役割分担する上で、POEで分掌化するのがいいかどうかを考え直して欲しいのである。いちおうPOEを日本に紹介した張本人なので、やっとIMCの考え方でスルー・ザ・ラインを実現したのに、今度はPOEで分断するようになってしまっては、提唱者としてはなんだか責任を感じる。

 もし組織上の職務分掌としてPOEで分けるなら、3つのベクトルを合わせてのKPI設定と担当者の評価軸設定が必要である。POEのトータルディレクターがいて、そうした設定をしないといけないが、そもそもそういうことができる人材が育つには、POEが別々に機能する組織体制では難しくなってしまうのだ。


企業のオウンドメディア戦略は、自社ドメインに見込み客を集客するという従来モデルでは成立しなくなった。ソーシャルメディアも企業にとっては基本、ソーシャルCRMを踏まえて、カスタマーセンターと広報を同一部門に置くなど、パブリックリレーションとカスタマーリレーションがオーバーラップしてしまう今の時代に合わせた企業インフラ整備の問題である。

ある意味、Web担当やソーシャルアカウント担当という職務だけでは部分最適ばかりが進む。POE全体最適をディレクションできる職務とそのスキル開発を考えよう。