2017年広告マーケティング業界 7つの予測 その①~その③


今年でブログ「業界人間ベム」も10年目に入りました。
年初の業界動向予測も2010年からそれらしいことを書いてきたので、これが8回目になります。



 さて、2017年の広告マーケティング業界7つの予測である。
2016年は広告業界にとって衝撃的なことがいくつかあった。いろんな意味で変革期として後に「2016年がきっかけで変革が加速したよね」と言われるようになるだろう。

そうした変わり目の翌年は、総じてデジタルが専門分野から本丸に吸収される年と言ってもいいかもしれない。

7つは以下のとおり

①「出島」から本丸のデジタル化へ~POEダッシュボード採用で加速するデジタル化~
②アナログ施策を最適化するDMP本格始動の年 ~DMP2.0の始動~
③テレビCM枠のオンライン入札の試み始動 ~テレビの本当の効果(間接効果とブランディング蓄積)を見極めて初めて出来る入札とデジタル偏重への一石
④トランスペアレンシーは広告主・エージェンシー相互関係の構築へ
⑤テレビCM素材のオンライン送稿開始のもたらす影響~ブランドごと発注の非効率~
⑥オペレーション人材不足の懸念と受注を断られる広告主、そして自動入札の試運転へ
⑦企業にCDO設置が本格化する年



まずひとつめは、

①「出島」から本丸のデジタル化へ

~POEダッシュボード採用で加速するデジタル化~

  昨年、ベムは一部の企業の「デジタルマーケティング本部」(略してデジマ)を「出島」と呼んだ。まさに「デジタルというエイリアンとインターフェイスするところは特別なところ」ということである。デジタルマーケティングは専門性の高い特別なマーケティングという意識(ある意味のコンプレックス)が生んだデジタルマーケティングという特殊なマーケティングをする位置づけによる組織化は、本丸のデジタル化を返って阻害するという結果を生んだと思う。
 再三言っているように「デジタルマーケティング」という特殊なマーケティングがある訳ではない。マーケティングがデジタル化するのである。
 その意味で、広告マーケティングの本丸がデジタル化しないといけない。

 昨年、日本アドバタイザーズ協会にデジタルメディア委員会が新たに設置された。従来アド協の下部組織であるWeb広告研究会(Web研)が広告主側のネット領域に関する活動を担っていた。しかし、企業のWeb担当者という位置づけは既に変質していると思う。今起きていることは、MAを導入しても「営業」が自ら関わらないとうまく機能しないということだったり、マーケティング施策全般を実際に実施している部門、担当者がデジタルツールを主導的に使わないと成果が出ないということだ。
 それは広告領域もそうである。マス広告、リアルプロモーションというメインストリームをやっている人たちがデジタルを駆使することで初めて「デジタルマーケティングが実践される」のだ。

 さて、その広告マーケティングの本丸である宣伝部がデジタル化する一番大きなきっかけは、マーケティングダッシュボードの導入になると思う。
 それは、POEを1画面で把握するリアルタイムダッシュボードであり、「打ち手」を前提にしたものだ。「打ち手」のタイミングと強弱を最適化するためにリアルタイムで競合を含めたKPIを把握する。
 Pは当然一番影響力のあるテレビCMの到達実態とデジタル投下が主なものになる。そして、これがある意味でオーディット機能も持ち合わせる。デジタルは3PASをかませてデイリーで配信数とユーザーレスポンスを見る。テレビも指示した素材が適正なポジションで出稿されているかリアルタイム確認ができる。
 Oへの流入も宣伝部がしっかり把握すべきだ。またEも自社ブランド名をコメントするソーシャルアカウントの数をカウントするなどダッシュボードに入れるべきデータは多いが、前述したように「打ち手」ありきでデータ整備をすべきでデータまみれになればいい訳ではない。




②アナログ施策を最適化するDMP本格始動の年 ~DMP2.0の始動~
 
 ベムは2010年代前半のDMPブームがある意味一過性で終わったと思っている。その理由には2つある。ひとつはDMP構築という大変な作業で最適化されるのがDSPによるディスプレイ広告くらいだったこと。もうひとつは、汎用拡張ロジックではまったく成果が上がらなかったことだ。

 まず、DSPの機能拡張版としてのDMPでは、ほとんどの企業のマーケティング施策の1%にも満たない入札型のディスプレイ広告だけが最適化されると言われても成果として評価できないのは当然だ。また拡張ロジックもテック屋さんの作った汎用ロジックなので、それぞれのブランドにとって「購買行動を起こした人を逆引きして見込み客をセグメントする」ということができていなかった。汎用ロジックはほとんど「同じようなURLを閲覧していたルックライク」であって、「化粧品やクルマのルックライク」ではない。欧米でDMPで成果を上げているプレイヤーに聞くとみな「ブランド独自の拡張ロジック」づくりが重要であると言っている。DMPは潜在層に新たなターゲットセグメントを個別につくることができる。そこが肝心なポイントである。

 さて、今年は「DMPがアナログ施策も最適化する」というDMP活用による「打ち手」の拡がりが起こる年だろう。これをベムは「DMP2.0」と呼ぶ。

 つまりは、DMP特に3rdパーティデータ(パブリックDMP)を活用して、ダイレクトメールやチラシや営業マンのアタックリスト改善など、従来のアナログ施策を最適化するようになる。

 デジタル施策しか「打ち手の最適化」ができなかったDMPがリアルプロモーション担当や営業活動領域に改善をもたらすことで、DMPは本当の市民権を得るだろう。





③テレビCM枠のオンライン入札の試み始動 
~テレビの本当の効果(間接効果とブランディング蓄積)を見極めて初めて出来る入札とデジタル偏重への一石

 ベムは、テレビ局も手売りの限界を早く認識して、オンライン入札による広告枠販売をすべきだとかねてから主張している。その方がテレビ局にとっていいのに・・・と思っている。視聴者が放送から離れていく今状況での従来からの取引だけでは売上はシュリンクする方向にしかない。外資系を中心に「TARPをアクチャルで握れ」とか、局にとっては在庫管理ができない売り方を求められるくらいなら、1本1本の価値を、価値を評価するバイヤーに入札応札で売った方がパーコストは高く売れるはずだ。
手売りでは1案件のGRP量が多い方がいい。同じ作業でも売上が違うし身入りも多い。でも案件単価が高いとパーコストは抑えられる。言っちゃ悪いが、スポットはAタイム1本に深夜早朝を抱き合わせ販売するわけで広告主にとってもホントにそれでいいの?と聞きたくなる。
 今の売り方を一気に変えることは全くないが、一部はオンライン入札(応札)で販売してみることをそろそろ始めないといけないだろう。テレビ局は航空会社が飛行機のチケットをどうやって販売しているか勉強してみるといいだろう。

 しかし、オンライン入札のためにはバイサイドがその1本の価値を評価するためのデータが必要だ。今はセルサイドのデータしかないが、バイサイドに有効なデータ供給がオンライン入札には絶対に必要となる。
 
 ベムはテレビ視聴データを含め「送り手の指標から受け手の指標へ」また「セルサイドのデータからバイサイドのデータへ」ということをマス広告宣伝部のデジタル化のひとつの課題として上げている。

 2019年には放送と同時配信が予定されているなか、特にローカル局などは「手売りの限界」に早く気づいて対処すべきだ。ローカル局などはどっちみち販売は電博におんぶに抱っこなんだから、ちゃんとバイヤーにデータ開示をして、九州のダイレクトマーケターに入札してもらえるような環境をつくるべきだろう。

 アメリカではディレクTVが放送と同一コンテンツの同時配信を始めた。ベムにはもう放送という形態は必要がなくなっているように思える。4K・8K対応ももう放送ではない。5G時代に4K・8Kが普及するとローカル放送局の画像は、MXテレビで観る昔の4:3のアニメのように感じるだろう。

 そうした時代環境を感じるまともなテレビ局は今年オンライン取引のへの布石を打つだろう。


 また今年はテレビCMの間接効果やブランディング効果に関する検証がされるだろう。ある意味デジタルへのリ・アロケーション要請が過度におきている感をベムは持っている。経営へのアカウンタビリティの問題である。
 それはデジタルで測定できる効果データがテレビでは出来ていないことで起きている。ただテレビの効果はデジタルのような即効性や刈り取り効果と同次元に比較してはいけない。タイムラグがあるし、ストックとしてのブランディング資産への寄与は測定しづらいものだ。よく、テレビを止めても売上が落ちないということがよく言われる。しかしそれはその年くらいで、翌年、翌々年にはボディブローのように効いて来る。テレビとテレビCMの価値を再検証する年になるだろう。
 さらに、テレビとデジタルの相乗効果検証が進むだろう。そのためにテレビの1インプレッションとデジタルの1インプレッションをどういう価値で見るかが注目されるだろう。デジタル広告のビューアビリティが検証されるのは当然のこと、その反動でテレビのビューアビリティデータも求められる結果となるだろう。