「双六型」より「ビンゴ型」に現実味があるコミュニケーション設計

カスタマージャーニーなる概念については、私は少なからず疑問というか現実感に乏しいと以前から思っている。新製品であれば認知から始めて購買意志決定までステップを描いてみるのはアリだと思うが、多くの既に市場にある商品となると、希薄であっても、店頭やメディアから何らかのブランド情報には接触していることになる。改めて振り出しから順を追ってコミュニケーションを設計することが適切なのかを考えてみたいと思う。みんなとにかく一度振り出しに戻して再スタートし、全員同じステップを踏むコミュニケーションの設計がどうもしっくり来ないのだ。

 そもそもフローを描いて順を追ったコミュニケーションプランをつくっても、ほとんどの消費者に順番にコミュニケーションすることは無理である。デジタル広告なら一人の消費者に5回のフリークエンシーがあれば、1番から順番に5番までの広告素材を配信できる可能性もあるが、デジタルだけで成立させることも難しいし、必ず5回見てもらえる保証もない。またデバイスが錯綜するのでやはり順番にコミュニケーションを進化させていくのは指南の技である。

しかるに「順列」でもってコミュニケーションを成立させようとするより「組み合わせ」で発想した方がいいのではないかと思う。市場にはブランドに対する認識や印象をどのように持っている人がいるかを分析して何タイプかにを分け、それぞれにどんなコミュニケーションが足りていないかを設定していく。

 

 フローを描いていくモデルが「双六型」だとすれば、「組み合わせ」で思考するのは「ビンゴ型」と言える。つまり、双六はみんな同じステップを踏むが、ビンゴカードには何種類かあって、その中にはすでにいくつか穴が開いているカードもある。あとひとつ空けばビンゴの人もいれば、ふたつ開ける必要がある人もいる訳だ。

 ブランドのターゲットはどんなビンゴカードを何種類持っているのかという発想をするモデルが「ビンゴ型」となるだろう。

 おそらくある程度の認知があるブランドにおいて、「ビンゴ型」は機能するだろう。