昔のテレビを語る その1 「三菱ダイヤモンドサッカー」



 昔、東京12チャンネル(現テレビ東京)で「三菱ダイヤモンドサッカー」という番組があった。海外(ヨーロッパ)のサッカーを観ることのできるのは唯一この番組で、ドイツのブンデスリーガや、イングランドリーグ(当時はプレミアリーグって言ったかな?福田総理みたい)の当時の日本リーグとは次元の違うサッカーを堪能できたものだ。印象的だったのはグランドが絨毯のようにキレイだということ。今でこそ国立競技場の芝は最高水準だが、当時はひどかった。
 実況の金子アナウンサーと解説岡野俊一郎さんのコンビは、このふたりでなければサッカーの実況は観れないくらいの定番中の定番だった。

 おかげで、英国やドイツのサッカー選手が大好きになった。古くはジョージ・ベスト、ウーベ・ゼラーあたりだ。これにオランダのサッカーがすごいインパクトで登場してくる。ワールドカップが日本で初めて生中継されたのは、西ドイツ大会の決勝ドイツ=オランダ戦のはずだが、開始1分でクライフがドリブルで切り込んでPKをもらったシーンは今でも鮮明に目に焼き付いている。そのうえ私の母方の叔母がオランダに嫁いだので、オランダのサッカー情報は親族ルートで非常に身近になり、オランダ人サッカー選手の魅力に大いに触れるようになった。

 私ベムが一番好きなサッカー選手は、オランダのマルコ・ファン・バステンである。あとは英国のケビン・キーガン、キーパーはデンマークのピーター・シュマイケル。今でこそセリエAやリーガ・エスパニューラの映像が日々目にすることができるが、三菱ダイヤモンドサッカーしかなかった時代は、北ヨーロッパ(英国、ドイツ、オランダ)に偏っていたわけだ。

 ブンデスリーガの放送が多かったこの番組から耳にするドイツ人選手の名前の響きは、実に格好良く聴こえたものだ。フランツ・ベッケンバウワー、ウォルフガング・オベラート、ギュンター・ネッツァー、ライナー・ボンホフ、ベルティ・フォクツ、カール・ハインツ・ルンメニゲ・・・。皆ストイックな感じでいい。で、このストイックというところにも文化背景がある。

 サッカー文化はよくヨーロッパと南米で対比されるが、基本はプロテスタントとカソリックの差で、同じヨーロッパでも精神風土を背景としてサッカー文化にも違いがあった。(マックス・ウェーバーの名著「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を読むと理解できる。)ところが、オランダサッカーが人種のるつぼになり、プレミアリーグもセリエAもリーガ・エスパニョーラも世界中からいい選手をかき集めてくることで、クラブチームでのサッカーの民族性は希薄になる。しかしこうしたハイブリッド効果はサッカーのレベルを著しく上げた。

ただ、一方で「三菱ダイヤモンドサッカー」で観ていたドイツ人しかいないブンデスリーガもそれはそれで民族性が顕著にでていてたいへん楽しめるものだった。