メディアプランニングは従来、クライアントの対象ブランドにとって最も適したメディア、ビークルを選択する作業なので、一見広告主サイドに立っているようではあるが、実のところは、対象ブランドと広告メニューのマッチング作業といえるので、選ぶ権利はあるが、基本的にはバイイングサイドの論理でカスタマイズされるものではない。
従来、広告スペースが有限な「枠」の論理で、その希少性をもって価値としてきたが、本来希少価値があるのはあくまでコンテンツであって、広告枠そのものではない。そして今後は、すべての広告主にとって価値のある「枠」というものは少なくなっていくだろう。
広告が、「多くの人が集まるところに出す」ことに価値がある、つまりリーチに価値があることはすべての広告主にとっての価値ではなくなる。
そのさきがけになっていく仕組みを、ネット広告の「行動ターゲティング」にみることができる。巨大なリーチのアドネットワークを対象に、広告配信対象ブラウザを特定していく「行動ターゲティング」は、広告の概念を「どこに掲載するか」から「誰に配信するか」に変えている。
この時に、起きる現象は、「配信対象を特定する(プランニングする)」作業は、従来のメディアプランニングの感覚とはずいぶん違うものになるということだ。
どんな商品ブランドにもターゲットプロフィールが設定されている。自動車などに至っては緻密なマーケティング調査を積み上げて、時間と労力をかけて「ターゲットプロフィール」を設定している。そしてこのプロフィールは単にデモグラフィックで想定できるものではない。ライフスタイル、志向性、などサイコグラフカルな切り取り方がされる。こうしたプロフィールから配信対象者を特定する作業には、新たなスキルが必要である。
「行動ターゲティング」でブラウザを特定するキーは「○○というキーワードで検索したブラウザ」とか「○○の掲載記事を閲覧したブラウザ」になる。
この時、このターゲットプロフィールが対象をなるのであれば、検索ワードは何で、どんなコンテンツを閲覧したブラウザなのか、またそのブラウザに対してどんなタイミングで、どんなキーワードやメッセージを含んだ配信をするかを設計することになる。
この作業をするには、ターゲットプロフィールとそこへのコミュニケーションコンセプトに十分精通していないとできない。
またクライアント側の送り手の論理だけでなく、受け手である消費者側が、どんなキーフレーズやイメージに対して琴線が触れるかを理解している必要がある。
ネットではこうしたマーケティング活用可能なレスポンスデータがふんだんにあり、スキルのあるマーケターによって読み取れる「インサイト」がある。
コミュニケーション開発のプロセスが、受け手主導になる時代、メディアを売るスキルも掲載面の情報に精通するだけではなく、広告配信対象者を選ぶために、広告主つまりバイイングサイドの情報に精通する必要がある。
こうしたスキル開発(人材育成)は従来のマスメディアの枠セールスの職能のなかからは開発が難しい。やはりコミュニケーションチャネルプランナーとコミュニケーションコンテンツプランナーとの連携、融合が解決のひとつの方向だろうか。
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