AdTech東京開催にむけて


 先日、ADTechを主催するDMG world media社のアジアチームのメンバーとお会いすることができた。

 DMGの親会社の英国デイリーメール&ジェネラルトラストは、日本でいえば朝日新聞みたいな100年以上の歴史のあるパブリッシャーだそうだ。

 来年の9月に待望のAdTechが東京に来る。
 このAdTechを日本に招聘できたのも、オリコムの武富局長の熱意の賜物と云える。
 すでに11年目を迎えるAdTechだが、欧米はもちろん、アジアパシフィックでは上海、北京、シンガポール、シドニーと 開催されていながら、広告市場世界第二位の日本がずっとパッシングされてきた。
 これを、武富さんのコネクションで引っ張ってこられた。業界として氏のご努力に敬意と謝意を表すべきかと思う。

 AdTechはテックという語感から、テクノロジーの見本市のように思われるところもあるが、実は広告それも次世代マーケティングコミュニケーションのカンファレンスと云っていいようだ。参加社の業態も、広告主、広告会社、出版社、ソリューションプロバイダーらが、ほぼ均等らしい。
 
 たいへん興味深いのは、欧米での広告主と広告会社のパートナーとしての関係確立までのプロセスである。欧米では日本にくらべて広告会社の地位も高い。メディアスペースのディスカウント合戦や10社コンペなどという、そもそも広告会社の付加価値や生産性を否定するような状況にならないのはなぜか。広告主と広告会社がよりクオリティの高いサービス提供のためにどんな試行錯誤があったのかを知ることができるといい。
 海外の情報でいうと広告賞の受賞作としての作品を知る機会はあるが、そのバックヤードでのビジネスとしてのいきさつが見えると参考になる。

 





 

 

 そもそも感心するのは、新しいビジネスのあり方を社外と積極的に交流して勉強しようとする意欲の問題だ。
 
 日本の広告市場はマス広告を中心にどんどんシュリンクしていくなか、従来のビジネス領域を超えたところにチャンスを見出すことが求められる。そうした情報やきっかけを人とのコミュニケーションの場を通じて獲得しようとする意欲が欠けていたら、マイナストレンドの中から這い出すことができないだろう。そうしたところで既に欧米やアジア中国に大きく水を開けられている。AdTechのようなカンファレンスの実態を知るにつけ、国内に閉じた広告業界の行く末も案じられる。

 私は、日本の広告業界が次世代シフトを遂げて生き残るには、いくつかの再編集(リモデル)が必要だと考える。

 ひとつは、企業のマーケティングそのもののリモデル。

 まだまだ多くの企業はマスマーケティング体制のまま、部分的にWebマーケティングを導入している。スルー・ザ・ラインで全体最適化が可能なはずなのに、宣伝部と販促部が異なる指標とベクトルをもってしまうのは、企業のマーケティング組織体制が従来のROIの分からない時代のモデルのままだからだ。

 こうしたことに、コンサルティングファームと協業していくことが考えられる。

 ふたつめは、広告会社機能のリモデルだ。

 といっても、既に現在広告会社の中にある機能だけでは、次世代型へのリモデルは叶わない。

 アドサーバーをはじめとするアドテクノロジーを駆使できるスキルや、キャンペーンプランの段階で、その成果を測る指標を設定し、測定・管理、またデータの意味づけをするスキルは、まだ広告会社内には開発されていない。
 前述のWebマーケティングへのリモデルを導くコンサル機能もそうだ。

 ある意味、コンサルやコミュニケーション開発のようなハイエンドなスキルと、システムを駆使してローコストオペレーションを実現する部分とのメリハリが必要で、今の広告会社にはまだ「スポットのマージンが20%あるからあとのサービスは丼勘定」という意識が抜け切れていない。

 再編して必要な機能は、

 ◆アカウントプランニング&キャンペーンプロデュース機能

 ◆コンテンツ開発機能

 ◆コンサルティング&分析機能

 ◆テクノロジーオペレーション機能

 の4つであろう。


 そして最後のリモデルは上記の機能を発揮するためのスキルセットの再編である。

 従来の縦割り構造(営業ラインがあって、スタッフが、クリエイティブ、メディア、マーケ、SP・・・)は、マス広告を売るために50年くらいかけてつくり上げた組織体制と職能である。

 この組織体制のなかで育成される職能(スキル)では、次世代対応はできない。

 考え方の基本は、従来の機能分担の壁を壊して、オーバーラップして仕事をすることである。そこには大まかに5つのスキルセットが考えられる。

 ・アカウントプランナー
 ・コミュニケーションチャネルプランナー
 ・ブランデッドコンテンツクリエーター
 ・ユニバーサルプランナー
 ・データテクノロジスト

 である。これらが、お互いの領域をオーバーラップしつつ次世代型コミュニケーションプランの開発を実践するなかで、確立されていくものと思われる。

 ユニバーアルプランナーやデータテクノロジストというスキルセット名はNYのインタラクティブエージェンシーR/GAで使われているものである。


 そして、日本の広告業界に必要な要件は、

 ・デジタルセントリックなエージェンシーサービスの確立
 ・広告会社機能の拡張(テクノロジー+コンサル)
 ・ハイブリッド人材の育成

   の3点であろう。

  特にハイブリッド人材の育成に関しては、
  
  マス広告サイドの人材とネット広告サイドの人材のハイブリッド

  マーケティングサイドとテクノロジーサイドの人材のハイブリッド

  マーケティングコンサル系とキャンペーンプランナーのハイブリッド

  人材が育成されることが期待される。