ネット広告のクリエイティブとポストインプレッション


 テレビCMのクリエイティブは実にハイエンドなクリエイティブである。で、これをそのままネット広告のクリエイティブに応用するとなるとどこかやはり借りてきた感が強い。

 テレビ広告が、送り手主導&アウェアネス獲得を基本とするのに対して、ネットはどちらかと云うと、受け手主導&レリバンシー醸成という感じだろうか。そうなると表現のクオリティもプロがつくるハイエンドなものでなければならないということはない。この辺は随分語られている話だと思うが、プロ仕様を敢てしない考え方がある。「広告表現はアマチュアの時代」になるかもしれない。

 随分昔、ネットでインセンティブキャンペーンをやると、不思議に「外車が当たる!」より「図書券5000円」の方が応募が多かったりすると云われたことがある。どうも身近で現実的な方が良いらしいと、変な結論で深く真相を追わなかったが、意味するところは何となく分かる気がする。

 動画もテレビ仕様より、Youtubeやニコ動の需要が圧倒した。ネット広告の表現もチープな方が良いとまでは言わないが、おそらくネット広告型のクリエイティブの流儀があるのだろう。勝手CMみたいなのは本当に面白いし、わざわざ観てしまう。

 今はまだクリエイティブというより原稿といった方がいい趣きのネット広告表現だが、リスティングのワードにあわせて広告文を書くように、一定のコンテキストでの流入向けのメッセージでつくるディスプレイ広告を量産する装置が今後必要だろう。

 さて、ちょっと前のエントリーで日本のネットマーケティングが広告レスポンス評価をクリックベースばかりでやっていると書いた。
 ポストインプレッション効果を評価しないので結果、クリエイティブによる最適化の概念も希薄になる。

 最近、atlas insutitute などで書かれている内容を見ると、流入直前のトラフィック効果だけ見るのではなく、そのユーザーがどんな広告接触の末に、バナークリックやリスティングで流入しているのかを分析することを奨励している。

 少なくとも、バナーを配信した先のブラウザを認識しておいて、企業サイトのサンキューページまで、そのブラウザが到達していれば、広告のクリックを伴なわなくても、ポストインプレッション効果として指標化する考え方は、Atlas institute.をざっとみるだけでも、もっともっと進化している。

 例えば、あるディスプレイ広告を配信したブラウザが、その広告主企業サイトをクリックを伴なわず訪問したとする。何らかの広告効果をもってサイト訪問を果たした場合、このブラウザ(=ユーザー)を大事にしなければならない。
 広告のクリックであれば、リンク先はそのブランドのページであり、LPOを駆使して最適化する発想はさすがに日本でも定着した。しかし、ポストインプレッション効果には全く対応できていない。
おそらく、このユーザーは広告を観たことで、企業サイトにアクセスしてみてくれたが、多くの場合、その企業サイトのトップページに来ているものと思われる。ところがトップページは、広告したブランドにすぐ導いてくれるわけではない。

 せっかく、広告の効果をして態度変容させて、企業サイトに訪問してもらったのに・・・である。

 この場合、特定の広告配信をしたブラウザがトップページを訪問した場合、そのブラウザ(=ユーザー)だけにはトップをダイナミックに生成して、広告したブランドをフィーチャーした内容にすることも考えられる。


 随分昔の米国ダブルクリック社のデータでも、CTRよりVTR(ビュー・スルー・レート)が2002年ごろから上回って以来、ずっとVTRの方が高いのに、日本ではクリックベースでしか広告を評価しない。

 ネットマーケティングの基本は、行動を起こしてくれたユーザーをいかに手厚くもてなすかである。入力フォームしかり。リアルな店舗で、店舗の構造が悪いとか、店員の応対が悪いとかで、怒って帰っちゃったお客さんがいたら、たいへんな問題として考えるだろうが、ネットではこうしたユーザーストレスに無頓着だったり、せっかくのアクセスに不親切だったりすることがまだまだ多い。

 誰が来客してくれるか分からない不特定多数に対して、駅前でチラシを撒くのもいいが、その金と労力がかけられるのであれば、来客したくれたユーザーをちゃんと誘導する。ちゃんと理解してもらう。ストレスなく申し込んでもらう。などのところにより神経を使うことが大事だ。

 その意味でのクリエイティブの使命は非常に大きい。