インタラクティブ・アカウント・プランナー


 私ベムは広告業界に新卒で入って26年経つが、その前半13年はマス広告とプロモーションキャンペーンを中心とした典型的なマスマーケティング、後半13年はインターネット広告のメディアレップを起案してイチから始めたインタラクティブ広告だ。ネット広告を始めた96年は電通さんがネット広告を「日本の広告費」のなかで初めてカウントした年で、16億円だった。それが昨年2008年には約7000億円にまで拡大し、今年は何と新聞広告を抜き去ろうとしている。
 英国ではすでにテレビ広告を超えているわけで、日本でもその日はそう遠くない。ただその頃は、ネット広告のデバイスはテレビモニターにも及んでいて、一般的には区別が微妙なものとなるだろう。
 
 さて、変化に鈍い広告業界も、さすがにこの変化には反応せざるを得ないだろう。ネット広告が新聞を抜き、大半の広告会社営業はデジタルに対応できるスキルを持っていない。一方で、自ら実践している広告主側のWeb担当者は知見を積み上げている。彼らには広告会社のアナログ営業はWeb言語で会話できないので、敷居が高くてあまりコミュニケーションがとれないでいる。(そしておそらく今企業でWebマーケティングを実践している人たちは、次世代の企業マーケティングの主役になっていく。)
 Webサイトの構築やネットモバイル広告は、今や重要な広告コミュニケーション活動で、場合によってはこの領域がコアになるケースもある。広告会社にはたいへん重要なビジネスであるはずが、営業のフロントラインにはこうした対応力がない。どこの世界に営業が自分の売っている商品について「良く分かりません」と得意先にいうだろうか。しかし残念ながら総合広告会社の営業の大半は平気で「俺、デジタル分かんないからさあ~。」という。そんな台詞を吐くことをまだ会社が許しているからだ。本当に真剣にデジタルに対応しろと指示していないからだ。
 いくらスタッフを強化しても、それは強化にはならない。デジタル&インタラクティブに知見のある人間が広告主の担当者と直接インターフェイスしてプランのみならず進行管理に携わらないかぎり、それは強化にはならない。また総合広告会社のインタラクティブ系スタッフも、営業ラインに知見ができると自分たちの存在感が希薄になるため、仕事の囲い込みばかりやる傾向もある。本当に会社や業界や後輩たちの将来を真剣に考える人は少ない。
 だからこそ今養成が急務なのは、インタラクティブ営業とでもいうべき存在だ。インタラクティブ領域といっても、ネットモバイルメディア、Webサイト構築(ネットマーケティング系、ブランドコミュニケーション系)、SEM領域、解析ツール、広告効果トラッキング、モバイル関連・・・といくつかの専門分野が成立している。
 それらをプロデュースできる営業こそ、今必要である。
 はっきり言って、マス領域もインタラクティブ領域も全部分かっているスーパーマンの育成など、そう簡単ではない。ほとんどいない。
 まずは「インタラクティブ・アカウント・プランナー」を育てることからはじめないといけない。