Audience Science


 知らない間に、Revenue Science社が社名を「Audience Science社」に替えていた。確かにこの方が的を射た社名だろう。行動ターゲティングの先駆者として、掲載面ではなく、配信先を特定する仕組み、つまりオーディエンスのデータベースをもつ企業であるからだ。

 この会社が匿名のクッキーに意味を持たせ、価値を生み出すことを本格的に実現させたと思う。ただ、行動ターゲティングの歴史は実に古い。
 96年当時、infoseekはすでにブラウザ単位に、サイコグラフィカルなベクトルをつけてクラスター化し広告配信のインベントリーとすることをやっていた。(但し、この仕組みは在庫量のフォアキャストが難しくて、実際の販売では挫折した。)

 レベニュー・サイエンス改めオーディエンス・サイエンスでは、確かクッキーのデータベースの企業同士の取引のようなこともやっていた。競合会社でなければ、お互いに訪問者のブラウザIDを交換して、活用しようという思考は働く。

 さて、最近リターゲティング商品が注目を集めている。
 当然、企業サイトの訪問履歴があるユーザーはそれだけ見込み客としての期待値が高い。実際に通常の行動ターゲティングよりCTRははるかに高い。CTRは必ずしも行動ターゲティングの効果を計る最終指標ではないが、リターゲティングに比較的レスポンスが高いことは事実だろう。
 企業にとって、自社のサイト訪問者のクッキーデータベースをどう活用するかは、日本ではまだポリシーを定めているところは少ないだろう。
 以前は、これを外部サイトでの広告配信データベースにしたり、協業企業と交換するなどという感覚はほとんどなかったと思う。(今もまだないか。)何か個人情報に近い感覚=お客さま情報の感覚があって、活用しずらい文化が日本にはある。
 
 そこで業界としてのガイドラインを明確にして、その扱い方を定め、ネットユーザーの不安や誤解を招かない施策が必要だ。

 ちょうど英国のIABが、行動ターゲティングに関するガイドラインを発表している。

 それは、

 ①通知(Notice)
  行動ターゲティング広告を目的として行動履歴を収集したり利用したりすることを、消費者に明確に告知しなければ  ならない。

 ②選択(Choice)
  消費者が容易に行動ターゲティング広告を拒否できる仕組みを提供しなければならない。

 ③教育(Education)
  行動履歴の収集と利用、およびその拒否方法について、消費者に分かりやすい情報を提供しなければばらない。

  というものだ。

また私見だが、ユーザーに対して自分の行動履歴を許諾するかわりに、同様の行動をしている他のネットユーザーがどんなコンテンツを閲覧しているかをリコメンドするような仕組みがあると、参加しやすいのではないかと思う。広告を最適化しますという広告の送り手の論理だけではなく、受け手にとってのベネフィットを、コンテンツのリコメンドをする仕組みとして提供すると面白い。
 リスティング広告が一見、検索結果に似せて成功したのと同様だ。

  オーディエンスサイエンス社が発表しているように、将来的には行動ターゲティングがサーチを抜くかもしれない。確かにネットユーザーが検索に当てているのは全体の5%に過ぎない。(米国の場合)ただ同じ論理でアドセンスがアドワーズの何倍にもなると言っていたグーグルの予測はまだ実現していないが・・・。

  技術的にも過去の行動からブラウザを抽出して、配信対象とするだけでなく、将来の行動を予約して随時配信する技術もでてくるだろう。

いずれにしても、企業サイト側のソリューションに軸を置かないと、「広告だけ」のサービスがあり得なくなる。