日本にCMOが育つか ~経営トップの判断しだい~


 従来からずっとマスマーケティングを機軸としてきた企業にとって、やっとブランディングなる発想を獲得し、ブランドマネージャー制度が定着したところで、デジタルの波が押し寄せた。Webマーケティングとかネットマーケティングとかは、Web上で顧客獲得をする手法だけでなく、マスマーケティングにもネットシフトが強く求められている。
 この状況で、実はブランドマネージャー制の弊害が起きていると言っていい。今Webを使った広告及びプロモーション施策というのは、各ブランドマネージャーが管理するそのブランドのプロモーション予算の一部を「Webを使った施策」に振り向けているだけである。

これではまずスケールが小さい。ネット施策はとかく少ない予算で大きな効果を期待されるが、そんなにいつもうまくいくわけではない。「ユニクロック」がネットを使えば誰でもできるというわけにはいかない。各ブランドの予算を集めて、大きな施策にしたほうが各ブランドにとっても還元される効果が、個別でやるより大きくなる。

次に知見が共有できない。各ブランドの担当者に蛸壺的に貯まるだけになる。

 これを解決するには、まず各ブランドのデジタル系への投資予算を集めて企画、執行するデジタルマーケティングのCMOを設置する方法がある。なにせ新しいマーケティングへのトライであり、従来の縦割り組織の壁を越えないとできないことだらけだ。
実際にネットマーケティング(顧客ないし見込み客をWebで獲得している)を実践している企業でも、売上利益責任を負っているセクションのほかに、サイトの運用を預かっているシステム部とか、広告出稿の窓口である宣伝部とか、コールセンター、サポートセンターを管理しているセクションとか様々な部署が関わる。例えば、サイトのユーザビリティを改善してコンバージョンを上げる施策の予算を取ろうとする場合、改善すれば広告による集客や、サポートセンターの人員を削減できるのに、管理する部署が違うので、予算のシフトができない。そもそもこうした部署編成は従来型であって、Webマーケティングをスルーザラインで実行するモデルではない。(私の経験でも、こうした提案のプレゼンに社長が出席すると決まるが、そうでないとなかなか決まらない。)

企業経営者は、デジタル施策のR&Dも含め、ヒトと金をデジタルCMOに集約してみるといい。経営トップがこういう判断をする時期がきている。デジタルマーケティングには典型的なフォーマットやモデルがない。各社がそれぞれのベンチマークを積み上げるしかなく、だからこそ、実践した企業とそうでない企業に大きな差がつくのが、デジタルだといえる。