2010年広告業界予測


  広告業界は売上減が続いている。1-3月も引き続き厳しさは変わらないだろう。問題は4月からの新年度に広告主がどれだけ積極策に出るかだ。デフレに歯止めが利かない状況下、雇用状況はさらに悪くなっている。新卒の大学生、高校生の就職難も、消費にボディブローのように効いてくるだろう。民主党の政策に消費経済が反応するのは、その効果のほどは別にしても年の後半からだろうから、広告会社もまだ当分仕込み期間が続き、刈り取れるのは基本的には来年になるだろう。
従来、広告は景気の先行指標だった。しかし今は景気回復に遅れて反応するようになった。落ち込む時は先に、回復する時は遅れてくる。生き残りも体力勝負だ。企業も広告コストのいっそうの見直しを図るから、「売り」に繋がらない広告出稿は本当に厳しい。メディア別で見ると、ネットは微増、テレビは前年割れを回避し始めるだろうが、新聞、雑誌、ラジオ、SPメディアはまだ減少すると思われる。

 広告会社もこの状況に対応して、すばやく体制の整備を行なうべきだ。まずメディアマンの人員配置を適正にすべきだろう。雑誌や新聞は数年前の半分になってきている。同じ人員体制を維持していては意味がない。メディアマンはメディア別に対応するのではなく、複数のメディアの知見を持って、顧客別に対応することを志向すべきである。また当然であるが、人員は余るので、どんどん営業のフロントラインに出て行かなければならない。基本的に「セリングサイドに立って売り物を開発する」というスタンスは最も強力な広告会社以外にはできない。売れるものをつくるのに、クライアントに接することのない部署にいては全く話にならない。

 さて、ネット広告市場もさらに、中身の変遷が進む。メーカーのEC参入はさらに進むだろうし、モバイル化も進むはずだ。モバイルサイトの構築市場とWebサイトの機能強化と分化が進み、サイト制作はモバイルを中心に成長する。ただ案件単価は微減するだろうから、制作だけメディアだけというトータルプロデュース力のない会社の収益力は依然上がらない。ただWebサイトもモバイルサイトもトータルプロデュースやコンサルティングは大きな企業ほど求められる。コンサルティング、プランニング、オペレーションと提供できる会社が強くなる。
 一方、マス系の仕事にはある転換が起こると思う。マスを起点にしていた広告人のうち優秀な人材がいっせいにデジタルへのアプローチを始める。ただ、いったんデジタルに起点をつくってマスとの融合にアプローチする者とのコラボレーションがないと、マスからネット、デジタルにアプローチするだけではうまくいかないだろう。
広告業界には、「今のままでは生き残れない」という意識はだいぶ顕在化してきた。今の時点でまだ意識がない広告人、昔の成功体験にいまだにしがみついている広告人は、さすがに退場すべきだろう。
 いずれにしてもアクションが起こる年になる。広告のビジネスが完全に変革する「次の10年」が始まった。