ネットTVとルーフトップコンサート



 2004年ごろに40万円近くで買った37インチのプラズマTVを最近、買い換えた。42インチでなんと68800円。安くなったこともそうだが、ネット対応が前機種と違い、数段進んでいるので、本格的にネットTV生活にしてみた。そこでYoutubeやHULUをTVで観る習慣がついた。私にとって、Youtubeはここ何年かはiPadでベッドに寝転んで観るものだった。昔の洋楽ものを観ることが多く、昔完全にコピーできなかったギターのリフを「解説」してくれる動画が多いので参考にしている。特にピックを使わないで右手の指で弾くマーク・ノップラーやジェフ・ベックものは30数年ぶりに解明できたりして、ギター小僧の魂が再燃する。

 そして私にとって大きな変化となったのは、42インチに繋げて観るYoutubeが長尺になっていることだ。(とっくの昔にそうなっているのは分かっていたが)それを、改めて感じたのは、ビートルズの映画「Let it Be」の最後の屋上コンサートシーンが、フルバージョンで載っていることだ。昔は曲ごとに観ていたが、屋上に出てきて「Get Back」を演ってから、警察に止めるように圧力かかっても、踏ん張って最後もう一回「Get Back」してから帰るまで30分弱のフルバージョンだ。これを大画面で観ることにまた意味がある。


 想うに中学のころに、隣町の静岡まで(私は清水に住んでおりまして)姉と一緒に電車に乗って「Let it Be」のかかっている映画館に観に行った。この映像を観るのは実にたいへんだったけど、それだけの価値があった。年子の姉は、小学生の私にビートルズやデビッド・ボウイや、もろもろロックを教えてくれた人で、洋楽に対して早熟だったのはみんな姉のおかげでした。その姉がガンで亡くなって今年で9年経ち、こんな簡単にルーフトップコンサートが観たいときにいつでも観られる状況になったことに感慨を覚えて、小さな遺影の写真と一緒にこのフルバージョンを観た。「便利になったよね。」「あの頃は小遣い貯めて静岡まで観に行ったよね。」という会話があったように思えた。

 今や、こうした再生可能なコンテンツは正にオンデマンドで自在に享受できる。だから今どきの人はリアルタイムで聴いていないアーティストの楽曲が「いい」というが、私が「チャック・ベリーがいいよね。」と言っているようなものなので、ピンとこない。今のアーティストも昔のアーティストも同じ時間軸にあって評価するものは評価できる今の若い人たちはある意味幸せだよね。溢れるコンテンツに囲まれている。
一方で、コンテンツの価値は、ライブコンサートなど一回だけの体験型コンテンツになっている。この前、友人の佐藤達郎氏の講演で、アメリカのアーティストのアルバムセールスとコンサート収入の比率のグラフがあったが、イーグルスもボン・ジョビもマドンナもみな7割~8割以上がコンサート収入だ。うちの娘もこの夏はえらい回数ライブに行っている。

 ちなみに、「Let it Be」の最後のルーフトップコンサートシーンで印象的なのは、大音量でビルの屋上で始まったビートルズにみんな集まってくるところで、パイプをくわえた初老の紳士がはしごを上ってビルの屋上に上がって観に来るところが好きだ。
 このころは、ポールとジョージが露骨に仲悪いので、ジョンの曲はジョージはちゃんとギターでリードとるけど、ポールの曲はリズムギターでコードしか弾かないので、ジョンが一生懸命リードをとっている。そういえば、私は最初に組んだバンドで最初に演ったのが「ゲット・バック」で、ジョンのリードギターをコピーした。当時は本人よりうまく弾けてると思ってたが、今観るとこれまた味があって、あんなには行かない。「エピフォンはギブソンに買収されちゃったんだっけ?」とか思いながら、ネットTV生活は新しい次元に進んだ感を「ルーフトップコンサート」をYoutubeでフルバージョンを観るというエポックメイキングな時間でした。