またまたNYからのレポート(Sakaeda Report)
先日(9/17)のNYでのProgrammatic I/O からも面白いテーマが続々と・・・。
そしてこのエントリーでは日本時間の明日AOLが発表する「プログラマティック・アップフロント」のお話。
「プログラマティック・アップフロント」という新語が去年から使われるようになり、今年は9月23日から開かれるアドウィークでAOLがプログラマティック・アップフロントに参入する記者発表を行う。
http://www.aolnetworks.com/blog/its-time-programmatic-explode-creativity
(AOLの事前発表 2013/7/23)
「アップフロント」とは米国のテレビ広告業界の用語で、毎年9月から始まる新番組に合わせ、前予約買いを6月に行う「販売イベント」の事。あるいは日本風に言い換えると「タイム枠予約販売」だろうか。アメリカの昨年のテレビ広告費はおよそ6.4兆円($64billion )で、この予算がプログラマティック(=デジタル)予算にシフトされる事が、マーケティング業界最大の構造変化と言われている。現に先日ニューヨークで行われたプログラマティックI/Oイベントでの「オオトリ」の最後のセッションでも、「TV広告費のビデオシフト」が大きなトピックであった。
先駆者はGoogle&Youtube。昨年以来、百億円単位の投資で「チャンネル」「オリジナルコンテンツ」を開発し、一部大手マーケター(ユニリーバ、トヨタ、GM等)に数十億円単位のパッケージをエクスクルーシブ権をつけて販売していた。Adageの資料によると、ある音楽パッケージは62億円という。(単位は1ドル=100円)
http://adage.com/article/digital/youtube-drops-price-upfront-packages-lure-tv-dollars/241137/
(Adage 2013/4/26)
今年は昨年の策から改良が進み「1億円単位」のパッケージに分解され、大手は口数多く買えて、中堅は手軽に買えるよう融通を効かせ、エクスクルーシブ権も解除し、より広範囲に広がるように考えられた。(エクスクルーシブは、同じ広告が何度もくどい程流れてしまった教訓もあった)
アップフロントならぬ(デジタルの)「“New“フロント」イベントが下記のチームで組織され(Google、Yahoo!、 AOL、Microsoft、Huluと、デジタルビデオ大手勢ぞろい)、今年は1.8兆円分がコミットされた。これは6.4兆円の「テレビダラー」からすると、相当大きなポーションであることがわかろう。WPPのマーティン・ソレルは「Googleはすでにテレビ予算の最大享受者になりつつあり、(Fox局を持つ)ニューズコーポレーションを抜く事になるだろう」とコメントしている。グーグルには1万2千人の「営業」がテレビ予算獲得に動いている。
“New”Front(プログラマティック・アップフロント)のメンバー(=売り手側)
New Frontの上記プレーヤーに登場しない、影の強敵はNetflixである。すでにNetflixはビジネスの立ち位置を「映画とテレビ局番組配信のNetflix」という他人コンテンツ単位の配信屋から、「映画と(オリジナル)番組シリーズのネットワーク」と変更し、オリジナルコンテンツのネットワークという位置付けにしている。「コンテンツはテレビ局有利」などというのは、もう今や昔の世界に進行しつつある。
Youtubeも米国でアクセス人気のWIGS, Nerdist, Vice, Machinima Prime, Jay-Z's Life & Times(以上チャンネル名 例は下のリンク)等のオリジナルコンテンツを開発し販売をしている。Youtubeのセールストップは「昨年は100チャンネルを作ることに目線が行った。しかし今年のフォーカスはチャンネルの販売そのものよりも、いかに有効なオーディエンスを作っていくかに特化する」と言っている。パブリッシャーやネットワークの売り物は(コンテンツに伴う)オーディエンス(データ)を開発する事、がここでも証明されている。
Machinima Primeチャンネルサイト
http://www.youtube.com/user/MachinimaPrime
例えばYoutubeは、アメリカ広告主協会がとりもつAlliance for Family Entertainment(AFE)という広告主のアライアンス(ユニリーバ、ウォールマート、サブウエイを含み、全米広告予算の37%を占める団体)と契約成立させ、ファミリーフレンドリーな番組32チャンネルをパッケージで販売成立させた。
Google・Youtubeのテレビ予算獲得の決め手文句は、テレビ視聴のヘビーユーザーを除く、「テレビを時々見だけのライトユーザー」へのリーチ・コストを効率化させること。アメリカのテレビ視聴者層はヘビーユーザーで固定しており、このユーザーへのリーチは強いのだが、時々の視聴者にリーチとフリークエンシーを稼ぐには多大なコストがかかる事で知られている。Googleは、「Extra Reach Tool」という商品で、ラップトップやタブレットを通じた視聴者に向けてテレビ予算のシフトを狙っている。
さて、冒頭のAOLに話を戻す。
打倒GOOGLE、アドテクの仕組みに、あの「アップフロント」概念を持ち込む
http://adage.com/article/digital/aol-launch-upfront-programmatic-ad-buying/243278/
(Adage 2013/7/24)
AOLがプログラマティックの世界にジャンプイン
http://www.adweek.com/news/advertising-branding/aol-launch-programmatic-upfront-during-advertising-week-151392
(Adweek 2013/7/24)
今月Adap.tvを買収したAOLはRazorfishのグローバルCEOをAOL NetworksのCEOとして迎え入れたとこで(aQuantive時代から、Razorfishに繋がってる人物、優秀なテックチームがいる)、GoogleやAdobeと対等に競える程の優れたチームを作れる可能性がある。
テック・スタック(スタック、もキーワード。アドテクを束ねてる状態をスタック、と呼ぶ)がまるでピザを細かいスライスに切ってしまうように、パブリッシャーに入ってくるはずの予算を、途中で細切れにして食べてしまっている。
これをAOLは「アドテク税」と呼んでいる。
http://www.adexchanger.com/online-advertising/aol-announces-programmatic-upfront/
(AdExchanger 2013/7/24)
例えば、広告主の予算1ドルに対し、
広告主:1ドル支払い
DSP:15%ー20% 取り分
データスタック:20-40% 取り分
SSP:15-20% 取り分
パブリッシャーに落ちる残高=45セントから25セント という構図だ。
AOLの提案は、技術的に新しい事が始まるのではなく、モバイル、ディスプレー、ビデオ、すべてを1プラットフォームで買って下さいというグーグル対抗策。AOL Networks は傘下に Adap.tvの他、Marketplace(SSP)や、
AdLern Open Platform(DSP)や、ADTECH(クロススクリーン、アドサーバー)Advertisiing.com(アドネットワーク)
などを束ねた、さながらミニGoogleだ。
http://www.aolnetworks.com/
(AOL Networks サイト)
この9月のタイミングの発表は、Q4予算を囲い込む事を狙っているとされる。ブラックフライデー予算と言ってもよい、ここぞのタイミングで年末投下調節する大きな「浮かせてある」予算だ。今年年末にかけて、どのような結果になっているか。プログラマティックトレンドのテレビ予算侵攻は、日本ではどのアライアンスが先手を打つか。
ニューヨーク榮枝洋文
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