どんな業種でも「営業」という機能については、見直しが行われている。
大概は、「セールス型から顧客の課題解決型へ」みたいな話なのだが、存在価値そのものが問われている面もある。その意味で、広告会社の営業というのはどうなんだろうか。
証券会社の営業マンは96年~2010年までの15年間でほぼ半減してしまった。あれだけオンライン取引が活発になれば必然であろう。そう言った意味では、「手売り」しかなかった広告に、オンラインでの入札型広告市場が大きく広がってきた昨今、状況は証券業界と似ている。
従来はマーケティングメディアはいわゆるペイドメディアしかなく、広告を打つことがほぼマーケティング活動という時代もあった。今までは広告メディアの情報をもっている広告代理店の情報優位は揺るがないし、メディアの広告枠を販売することにおいてはプロフェッショナルな代理店営業マンという存在だった。(昔僕も営業でしたがメディアプランはほとんど自分で作っていたしね。)
ところが、企業のマーケティングメディアはペイドだけではなくなった。オウンドは当然広告主自身が開発運営するものだし、アーンドの中核になったソーシャルメディア対応も(これもツィッターの公式アカウントやフェイスブックページはオウンドメディアと言えるのだが)実施的に知見は広告主企業側にある。
しかもペイドメディアもDSPをプライベートDMPでユーザーごとの評価分析を加えてセグメントしてターゲティング配信するような作業は、本質的に企業がインハウスで行うべきものになっている。(評価するための3PASしかり、マーケティングの根幹になるプライベートDMPしかり、企業自身がすべきもので、代理店に任せる性格のものではない。)
つまり、ペイドでさえ、「どこに掲載するかから誰に配信するか」というパラダイムシフトにあって、配信先を規定するデータは広告主企業の所有するものであったりする。
(またオーディエンスデータがマーケティングの通貨になるような時代において、代理店はどんなオーディエンスデータを所有できるのだろうか。大手広告主はメディアと直接データエクスチェンジしてしまわないか・・・。)
そうなると、メディア側の情報を保有することで成り立っていた広告代理店の広告主に対する情報優位は、あまり意味を持たなくなってくる。メディアを売ることにおいて、情報優位とスペシャリティを発揮していた広告代理店、特にその営業マンという存在は、(もちろんプロモーションの企画実施を仕切る役割など、機能すべきことはたくさんあるのだが、業務範囲が幅広くなればなるほど、そのプロフェショナル性は希薄になり、)ただただ連絡要員化してしまう。
そして、もっともその存在を危うくする現象は、広告主側担当者のプロ化である。
広告主が素人である時は、代理店営業はワンストップ機能を発揮して、バックヤードにいる専門スタッフを連れていけばよかった。
しかし、特にデジタル領域での広告主側のプロ化は、ネットに関してはアマチュアの営業マンにとって、その存在を徹底的に問われるものとなった。
日本におけるネット専業代理店の市場とは、総合代理店がネット広告市場を軽視し、従来営業マンによるワンストップ体制でこれに臨んだことで専業に持って行かれた市場である。
欧米ではブランド側にスペシャリストがいる。日本でも、オウンドメディアを開発運用する方がたを中心にスペシャリストがどんどん育成された。
彼らから見ると、代理店の営業マンは、その場で何も回答できない、逆に間に入っているからこそ業務が的確にかつスピーディに進行しない原因になってしまった。
問題は、今後もこうした総合代理店の営業のワンストップ体制が機能するのかという点だ。僕は某代理店にいるころ、顧客とのインターフェイス機能の専門性による水平拡大を主張したことがある。
「総合力と専門性」、この課題を現状の代理店の営業体制で機能させるのは既に無理がある。広告マーケティングサービスの領域拡大は今後も続くだろうし、むしろ違う人種を求めている。
もうひとつの課題は、セールス力という考え方だ。
売るものが、セルサイドの論理で作られたものであり、これをプロダクトアウト的にプッシュセールスするのであれば、営業の機能はセールス力だし、売る人のマンパワーが要る。
しかし、セルサイドの売り物を売るのではなく、バイサイドの買い物を設計し、用意する場合、必要な機能はセールスなのか。
既にセールス力は営業の最も重要な機能ではないのではないのか。
今でも、「人が足りない。人が足りない。」と言っている代理店の営業がいっぱいいるだろう。しかし、これは「今、自分たちは機能していないので、機能する人が足りない」と自ら言っているに過ぎない。
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