このブログでもWPPは24/7の買収あたりから変わってきたといえると書いた。僕が90年代に会ったダブルクリックのオコーナー氏と24/7ムーア氏は非常に対照的な人柄だった。ムーア氏は意外とよくいる「ノープロブレムおじさん」で、ケビン・オコーナーは物静かで自分の会社がすごいすごいとアピールする人ではなかった。しかし、24/7のナンバー2だったブライアン・レッサー氏は非常にキレ者だったように思う。
24/7がWPPに買収されていから、彼がWPP内でのデジタル戦略を担うことになり、WPPの方向も変わったと推察する。
今回は、Xaxisと24/7の合併(これは予定どおりでむしろずいぶん遅れた)に関して、DINY榮枝からのレポートを掲載する。少し長いので、2~3回に分けてエントリーする。
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2013年12月3日にWPP傘下のXaxisと24/7を統合させるアナウンスがあった。
http://www.wpp.com/wpp/press/2013/dec/03/xaxis-and-247-media-to-merge/
日本でもWEB記事になって解説されているが
http://www.exchangewire.jp/2013/12/20/opinion-wpp/
少し違う目線で筆者なりの読み方を紹介したい。筆者(私)の視点は「マーケター側のグローバル・ダイレクトリーチの要求」「透明性の追求よりもプログラマティック・プレミアムの提供」そして、「WPPの戦略と内部事情」に注目した。
・Xaxis(ザクシス):WPP内のトレーディングデスクと(外部からは)位置づけされる、広告枠やオーディエンスデータを「買う」側=広告主側に提供する技術・サービス部門。
・24/7 Media:WPPが2007年に買収した、広告枠やオーディエンスデータを「売る」側=パブリッシャー側と多数繋がり、彼らの収益最適化を提供する技術プラットフォームを提供する会社。
そもそも、「24/7がXaxisと合併」と聞けば「え、まだ統合してなかったのだっけ?」が業界内の人の反応だったのではないか。2007年にマイクロソフトと競い合ってWPPが買収した24/7は、Xaxis設立前からのWPP・CEOマーチン・ソレル氏の基幹戦略であり、24/7買収後に設置したXaxisとの統合はニュースではなく、内部事情を「かっこ良く」アナウンスしたに過ぎない。戦略戦術的にも2007年から変化は無く、ホールディング会社レベルでの統合アナウンスは「体裁よく」なったという次元だ。
XaxisCEOのBrian Lesser氏は24/7出身で、WPPの24/7買収を機にWPP内でMIG(Media Information Group)を立ち上げ、その後Xaxisを立ち上げている。そのXaxisのニューヨーク本社オフィスは24/7のニューヨーク本社オフィスと同じ住所に位置する。卵か鶏かの議論で、649億円の24/7の大型買収時点で「Xaxis的な」構想があったからこその買収だ。今後同様のセルサイドとバイサイドを統合する、というアナウンスはPOG(ピュブリシス・オムニコム・グループ)でも発表されるのは時間の問題で、その時点で「セル&バイ両方持つことはどうよ」と考えてみても、少し間が悪いのであらかじめ。
地理的スケールリーチ獲得を優先
XaxisのLesser氏が2013年は世界中を飛び回っていた事を噂で聞いている。地理的な広がりを確保する事が今年の必須至急であった事は間違いない。
上記添付は6月4日のWPPデジタルの発表ファイル。下記はその半年後の24/7との合併記事だ。比べると、拠点数、扱い高とも急激に大きくなり、地理的に急拡大「させた」事がわかるだろう。
12月3日のWPPリリースより。
Xaxis currently runs over 450 billion impressions(半年前は300 billion) a year in 31 offices within 28markets across(同22) North America, Europe, Asia Pacific and Latin America. With over 500 employees(同300), 24/7 Media operates in 18 offices across these same regions. Combined the two companies will manage 2 trillion impressions annually across the world.
WPPのバイサイドのリーチ確保は24/7買収時点から
フレネミー(フレンド+敵エネミー)のグーグル頼みでは中抜きの波に巻き込まれると確信したからこそ、WPPは独自技術にすべく24/7を買収した。上記自社発表の図では、「POGはグーグルに中抜きにされて、ペプシやP&Gにリーチされてしまいますよ」、と牽制している。
「透明性、は首を絞める」
よく出てくる表層的な議論に「セルサイドとバイサイドとを両方持つには、透明性をクリアにする必要がある」と、言い出す場合があるが、これは「分かってない」か、「嫉妬」のいずれかと思える。日本では古来から電博を筆頭とし、新聞・ラジオという「トラディショナルメディア」の時代から「媒体側と、クライアント側の両方の顔」を持つ事はお馴染みの構造だ。CCI、DACも既に「両方向」にサービスを提供している。むしろ日本の方が欧米でのアレルギーより「考え方が進んでいる」と言っても良いだろう。先仕入れの在庫リスクを負いつつ、媒体社と合意の価格で売る流れにおいて「透明性」という単語を簡単に使うのは適切ではない。世界最大のデジタルメディアを扱うグーグルは「両面」統合サービスの代表選手として成功している。
WPPは、アービトラージ(先仕入れによる、売却価格差を儲けとする取引)について、特に問題視しないとしている。Lesser氏は「何か課題があるとすると、それはパブリッシャー価値を傷つけるような価格で売却した場合か、あるいはマーケターが何を買ったのかわからない場合、のみ」と言い切り、「むしろ1本のプラットフォームでパブリッシャーとマーケターが直接繋がる(余分なミドルマンの排除)事で、得る物の方が多い」とする。実際、ホールディング会社4社比較でXaxisがダントツのスケールと売上高を誇り、他社の(Publicis、Omnicom、IPG)トレーディングデスクは透明性を強調するあまり、ぱっとしないのが実情ではないか。
透明性について補足すると、マーケター視点から見て、「自分が何を買っているのかが分かっている事」は重要だ。つまり、買ったインベントリーやオーディエンスに対し、その「原価」を知る事が重要なのではなく、自社基軸の価値(価格)をつけて管理する必要性は求められる。
その延長でマーケターが自社(管理)プラットフォームを作るトレンドが欧米では進んでいる。ベスト・イン・クラスのベンダー選びと、(データ)スケールの効く買付けシステムが組むためにはどうするのか。さらにアドテクベンダー側も投資家の売上高成長要求から、エージェンシーを飛ばしてマーケターへの直接侵攻も進んでいる。テクノロジーが可能性を広げたばかりに、マーケター側が「技術(スタック)をどう繋げれば良いか」に投資、時間が取られてしまうようになる。このギャップを突いたのがホールディング会社レベルでの「オールインワン(両つなぎ)」戦略だ。その横で、透明性を謳って、リスクの小さいビジネスをするエージェンシートレーディングデスクも存在する。。。。
これらは全てビジネスモデルの違いであり、各マーケターの事情、戦略により、それぞれフィットするパターンがある。このパターンの分析・見極めと、それぞれの長所を知る事がマーケター目線では必要だ。ほんの一例モデルが今回のXaxis/WPPであり、巨大グローバルクライアントを対象としたケースという点だ。雲の上の世界は、地上の価値観では議論ができない、そんな所だろう。ただし、上をみて成長するなら、部分的にも学べるトレンドが行間に隠れている。
後半につづく
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