広告に接触すると買わなくなってしまう人がいるということ その2


「どうやら広告に接触すると買わなくなってしまう人がいる」ことを広告接触と購買行動を紐付けたデータの中に垣間見ることができると前回書いた。
 では、どうしてほっとけば買ったかもしれない人が広告を当てたばかりに買わなくなるのか。仮設としては、

①広告のトーン&マナーが嫌い。(または出てくるタレントが嫌いなど)
②ブランドを勧める文脈が共感出来ない。(かえって自分には関係ないブランドと認識する)
③広告がしつこい。(リタゲバナーにもありそう。)タイミングが悪い。

などが考えられるが、コミュニケーション内容が嫌悪感など反感を与えてしまい、逆効果になるという表現の問題と、フリークエンシーが多過ぎるまたは、タイミングが悪いという広告接触のさせ方の問題と2つあると思う。

 まず、コミュニケーション内容の方だが、昔も今も「広告」というのは出来るだけ万人が共感し、好感するコミュニケーションを目指しているものだが、機能するメディアがマスメディアだけはなくなると、最大公約数のコミュニケーションづくりだけではなかなか成立しづらくなっているのも否めない。
 ただ、ほとんどの対象者が共感や好感するコミュニケーションが出来るブランドとそれが難しいブランドがあるだろうから、従来のマスアプローチがすべてだめな訳ではない。

 ところで、「嫌い」ということは無関心よりはまだ見込みがある訳で、コミュニケーションの改善によっては顧客になってもらえるチャンスはある。とみて、「コレ嫌い」という反応に対して「スミマセン。では、こんなのいかがでしょうか?」と返すことができると面白い。嫌いだった以上に好きになってもらえるチャンスがあるかもしれない。まあ無反応のなかの「嫌い」を観測できればということだが・・・。

 DMPで分析をしていると、何らかのクリエイティブに反応する人というセグメントをつくることが必要になる。(だからデータ分析をする人にもクリエイティブのセンスや知見が要るのだが・・・)逆に言うと反応しない人という括りも当然できる。ビッグデータ時代のカスタマージャーニー分析とは、コンバージョンした人だけを分析するのではなく、しなかった人、広告に反応しなかった人を分析し、コンバージョンした(広告に反応した)人にはあって、しない人にはない文脈を発見することである。従来、膨大なコンバージョンしない人のデータを分析対象にすることはまずなかった訳だが・・・。
 もうひとつの、「しつこい」「タイミングが悪い」は、上記に比べて解決しやすいかもしれない。フリークエンシーとリーセンシーの最適化はテクノロジーで対応もできる。
 
 一部のDSPには、クリック率を最大化するために、配信間隔を自動最適化するテクノロジーを搭載しているものもある。ユーザーが「しつこい」と感じているかどうかを感知している訳ではないが、結果クリック率が低くなるフリークエンシーや配信間隔は自動補正される訳だ。

 いわゆるタイミングも曜日や時間帯であれば最適化される。しかし、本当の意味の消費者のタイミングというのは個々の人の欲求のタイミイングのことで、今ある仕組みだけでは十分把握出来ない。しかし、そこはビッグデータ時代、消費者ひとりひとりのベストなタイミングを察知する仕組みをつくることは出来るかもしれない。

 今はほとんどの広告活動が、送り手側のタイミングで行われている。キャンペーン期間とは広告主のタイミングであって、必ずしも消費者のタイミングではない。リスティングや一部DSPのような運用型広告は、こうした消費者のタイミングに合わせた広告とも言えるが、本来はもっともっと通期で消費者のタイミングに合わせて広告が送られる施策に予算は配分されるべきではないかと思う。
 検索行動という分かりやすい消費者のタイミングだけではなく、様々なデータから消費者のベストタイミングを察知して配信する仕組みがこれから必ずでてくる。おそらくデータをフィードしてきて自動入札される仕組みだと思うが・・・。

 広告の無駄と逆効果を減らす努力は、テクノロジーを活用しつつ、これから本格化するだろう。今までは逆効果だったことも分からなかったからね。送り手の「思い込み」は検証されないといけない。