メディアにおけるプル性とプッシュ性


 インターネットとテレビを比較する時に、メディアの性格で一番対照的に捉えられるのが、ネットがプル型メディア、テレビがプッシュ型のメディアだということだ。
 メディアのプッシュ性、プル性についてはあまり突っ込んだ議論がなされていないが、メディア接触者が情報にアクティブ(能動的)か、パッシブ(受動的)かによって、各メディアの役割やメッセージ内容を判断する尺度になる。もともとメディアには情報深度の特性があり、アウェアネス(気付き)に強いメディア、会話のメディアとして理解を促進するもの、ブランド体験させるメディア、「自分に向けている」と感じさせるパーソナルなメディアと主に4つにディメンジョン構造に分けられる。


 一方、おそらく最もプル性の強いネットにおいても、広告手法によって随分幅がある。検索行為は最もアクティブであろうから、リスティング広告は最もプル性の強い広告手法である。フローティング広告やポータルトップでのディプレイ広告はプッシュ性が強く、ネット広告のなかでの比較的アウェアネスを担当するものだ。また、動画広告はテレビと同じ素材であっても、動画コンテンツそのものへのプル性が強いので、テレビCMと捉えられ方は違ってくる。

 一般的にいえば、プッシュ性の高いメディアは一方で高いリーチをもっていて、接触者のなかの見込み客のプルを引き出すことができる。プル性の高いメディアでは、自己関与性を高めたり、「これは自分向けのブランドである。」という意識づけを行なうことができる。いわゆる「情報深度」を理解したうえで、プルとプッシュをうまく使い分け、キャンペーン全体をインタラクティブにするのが「インタラクティブなキャンペーン構造」と云える。いくらインタラクティブ性のあるメディアを使ったからと云って、しっかりプッシュすべきはプッシュし、できるだけ多くのターゲットのプルを引き出さなければ意味はない。そしてターゲットユーザーのプルを価値あるものとして評価することだ。

 重要なのは、引き出したプル(ターゲットであるユーザーのプル)は単なる広告投下量とか接触量というものと価値が違うという認識である。

 従来のリーチ×フリークエンシーが広告効果だとした時代は既に終わっている。こういう状況下では、「マーケティングメッセージを送る」という送り手側だけに立った態度にはもはやほとんど力がない。残念だが、こうした一方的な広告はほとんど無視される時代になってしまった。

 そこをしっかり認識すると、ユーザーの関心が顕在化して一定のアクションを起こした故のアクセス行為の価値と、単なる広告接触量を一緒くたにしないことだ。そしてだからこそ、またこのプルを引き出すためのプッシュの力についてもっと考えるべきなのである。