送り手発想と受け手発想のギャップを埋める。


 先日、G社のT氏と食事しながら、次世代の広告コミュニケーション開発の方向を議論していたときに、T氏が云った「送り手発想と受け手発想のギャップを埋める。」というコンセプトに強く同意した。
 従来の広告コミュニケーション開発の基本は、テレビCMのしかも15秒を前提にしたもので、商品のレギュレーション(規格)からそのUSP(ユニークセリングプロポジション)、商品ベネフィット、そしてそのエッセンスとメッセージを尖らせていく手法だ。「そうしないと刺さらない。」「他のノイズに埋もれてしまう。」という考え方。やはりアテンションを獲得することが一義的なクリエイティブである。
 一方、WebマーケティングやSEMの世界では方向は180度違う。ユーザーのインタレストに対してひとつひとつカウンターでメッセージを返すのが役目で、まさに受け手主導の発想である。見込み客であるひとりひとりのユーザーが買う理由を見つけに来るところに、ひとりひとりにすべて答えを用意する仕組みをつくらなければならない。
 
 こうした送り手主導のコミュニケーション開発にも、受け手主導のコミュニケーション開発も実は万全ではない。前者はもちろん、世の中のコミュニケーションの本質が、がぜん受け手主導のものになったことを受けて、送り手発想のコミュニケーションの力が圧倒的になくなったことを前提にモノを云っている。
 しかし、受け手の琴線に触れるものが何かをさぐりながら、メッセージ開発するのはいいが、そこは現状追認型であって、新しい価値を提案する場合は、送り手がやはりしっかりしたメッセージをもつ必要がある。
 
 そこには「送り手発想のアプローチ」と「受け手発想のアプローチ」の間にあるものを埋める作業が要る。
 きっとそうした作業をするのが次世代広告コミュニケーション開発の担い手なる者のミッションだろう。