第三者配信サーバー(バイイングサイドアドサーバー)を考える。


この前のエントリーにトラックバックしてくれた方の文章を読んだ。たいへん評価していただいて恐縮だ。しかし第三者配信サーバーを基本トラッキング(効果測定)システムというように理解されている部分があったが、その理解はちょっと違うかもしれない。

「第三者配信サーバー」は別名「バイイングサイドサーバー」と呼ばれる。つまり広告主が使うシステムであって、媒体社が使うものと区別される。アドサーバーとしては技術的には同じだが、使用者がバイイングサイドかセリングサイドかで役割が違ってくる。
  結論から云うと、第三者配信サーバーとは、広告主(バイイングサイド)にとって最適な広告クリエイティブを最適なプレイスメントに最適なタイミングで配信するもの(オプティマイザー)である。決して効果測定システムではない。

 今から10年ほど前に、この第三者配信サーバーを世界で始めて市場にローンチしたアドナレッジ社をボストン郊外に訪ねたことがある。CEOは元南アフリカ空軍パイロットで非常に頭のキレる男だった。アドナレッジ社はその後このバイイングサイドサーバーをダブルクリックに売ってしまうことになるが、バイイングサイドが広告配信を主導するという概念を始めて実現した功績は大きい。
 その後もIBMが世界中で、DFA(Dart For Advertisers)を使って広告配信を行なうことをポリシーにしたので、日本でも当初はヤフーもタグを受け入れていた。
 
 バイイングサイドサーバーの効用は、まずアド配信をサイト(メディア)単位ではなく、キャンペーン単位でコントロールすることにある。キャンペーントータルのUUのオーバーラップも把握できるので、到達効率の最適化が可能だ。しかし最大の効用はクリエイティブの最適化のために基本広告素材の入稿が広告主主導で配信できることである。
 
 この発想の原点として、インターネットではメディア(サイト)ごとに掲載面をベースに広告配信を考えることがナンセンスだということがある。ここは従来のメディアでのビークルごとにメディアプランニングする思考と最も違うところだ。
 つまり、「どこに掲載するか」から「誰に配信するか」という考え方にシフトしていることと、広告レスポンスの高いところに自動配信して最適化を図るという発想をベースにしている。
 (だからこそ、アメリカでは第三者配信の延長としてアドネットワークが台頭したのだ。)

 最適化というポイントでは、クリエイティブとプレイスメントのマッチングをアドナレッジも最初に指摘していた。つまり、同じクリエイティブでもサイトAではCTRは高いが最終的なコンバージョンはイマイチとか、サイトBではCTRは比較的低いがポストインプレッションでの誘引が高くて、トータル(ポストクリック&ポストインプレッション)のCPAは良いということがある。この場合、ポストインプレッションが高いスペース用にクリエイティブを最適化することができる。こうしてプレイスメントとクリエイティブの最適化(マッチング)をクリック、ポストインプレッションの両面から見ることができる訳で、こうした手法でベンチマークを積み上げた欧米のネットマーケターが日本より先を行っているのは当然だろう。

 そして現状で第三者配信サーバーは、いわゆるオプティマイザーとして進化している。広告レスポンス(CTRではなく最終効果)の高い「プレイスメント」×「クリエイティブ」×「ブラウザ」(配信対象)×「配信タイミング」・・・の組み合わせを発見して配信比率を自動的に制御することで、コストパフォーマンスを最大化する。従来のPDCサイクルのように人が介在しない。今私が云っている「第三者配信サーバー」とはこのオプティマイザーである。データオリエンテッドにプリプランをつくり、実際に配信し、広告レスポンスデータ(アクチャルデータ)から最適化を図るというサイクルをつくることはネット広告のメディアプランニングシステム開発に着手し始めた今から10年前から発想していた完成形だ。


 バイイングサイドの発想では、第三者配信とは、広告主にとっての最適のアドネットワークをキャンペーンの都度形成していくものである。

 メディアが自社の掲載面への広告配信を自分でコントロールしたい気持ちは良く分かる。しかし長い目で見ると、広告主側がクリエイティブ(広告原稿)とプレイスメントをコントロールしてネット広告のパフォーマンスをあげることで、CPMを上げることはメディアにとってもいいことだと思うのだが・・・。