ネット広告「虎の穴」第二回目


 第二回目は、広告マーケティングの新潮流と今後の広告ビジネスに関わるデジタルインパクトについて解説を試みた。

 まず、今起きていることを整理。
・メディア環境の変化
・消費者のコミュニケーション行動の変化
・消費者の構造的購買意欲の減退
・市場のシュリンク
・不況

そしてもうひとつ付け加えるのなら、デジタルネイティブの登場。

いずれにしても、単なる循環的景気後退期ではなく、広告マーケティングに関わる大転換が起こっている。

 その根本は、ひとことで言うと、コミュニケーションの主導権が送り手から受け手に移ったことにある。
 情報量が爆発的に増え、消費される情報も96年からの10年で13倍にもなった。またネットを中心にスタンバイされている情報量は何と410倍である。このことは情報に対する生活者の取得態度を大きく変えたといえる。
 つまり情報に関しては常にアンテナを張って耳を欹てている状態にはなく、興味関心が顕在化したときに初めて情報にアクセスするようになった。
 したがって、関心のスイッチが入ったときとそうでないときの差があからさまになったと想定できる。従来の一方的に送りつけるコミュニケーションスタイルでは、そのコンテンツが受け手の琴線に触れるかどうかによって大きく違い、情報投下量だけでは効果を期待できなくなったといえる。

 このような環境が、広告マーケティングにおけるいくつかの大転換を迫っている。
・「広告クリエイティブ」から「ブランデッドコンテンツ」へ
・「売る理由」から「買う理由」へ
・「どこに掲載するか」から「誰に配信するか」へ
・「ブラックボックス」から「ROI測定可能」へ
・「意見を聞くマーケティング」から「行動を把握するマーケティング」へ

この5つの転換要素について、解説した。
特に、Webによるコミュニケーションは、従来のマスメディアによる(送り手主導による)コミュニケーション構造と180°違う。
Webはありがたいことに、見込み客が向こうから「買う理由」を見つけようと、いろんな文脈でアクセスしてくれるコミュニケーションツールである。その認識に立って、マス広告のコミュニケーション開発のアプローチとは全く違うアプローチで対応しなければならない。
またアドテクノロジーは、従来では発想すらできなかった広告のターゲティング配信を可能にした。
ただ、行動ターゲティングなどの手法は、メディアプランニングを、セリングサイドの情報をベースにした従来型から、バイイングサイドの情報にベースにしたものに転換を余儀なくされる。
「どこに掲載するか」はメディア側の掲載面情報で成立するが、「誰に配信するか」は、誰を選ぶ際に、対象ブランドのユーザープロフィールやコミュニケーションコンセプトに精通していなければできない作業となる。アドテクノジーは、メディアプランニング作業を大いにバイイングサイドのものになる。

また広告のROI測定管理は、長年広告に関して「半分は無駄だと分かっているが、どっちの半分が分からないので・・・」と言わしめてきた「ブラックボックス環境」を打破することになる。
広告投資に対するリターンの把握は、広告主にとって非常に重要なテーマになった。現在、e-コマース利用のネットでのROI分析はかなりのところまで及んでいるが、これをマス広告など効果の評価、またリアルな世界でのビジネスのゴールにどれだけ至ったかを把握する仕組みなどが、検討されている。ネットに閉じたROI測定管理ではなく、統合的なマーケティングROIの測定に企業の関心は移行しているのだ。

いずれにしても、こうした広告マーケティングの大転換期であることを十分に認識した上で、次世代広告マンとしてのスキル獲得の意味をしっかり認識することから始めなければならない。
ここが言ってみれば「虎の穴」参加資格である