企業サイトとクッキー


 Webサイトでクッキーを使うことを躊躇っている企業は意外と多い。はっきりポリシーだとしてクッキーを使わないことを宣言している場合もある。企業サイトを訪問するユーザーをお客様と考え、そのユーザーにクッキーを付与することでの不快感を与えないようにとしている。クッキー利用に対する見解は、それぞれにあるだろうし、クッキーを使わないというのも確かにひとつの見識である。

 しかしこの考え方は、顧客本位のようで実はそうでない面もあると思う。クッキーはブラウザを個別に認識するために使われるもので、CRMの発想からすると、顧客のためにこそ使われるべきものである。

 何度も訪問してくれている上客に対して、毎回毎回初めて来たお客として扱うことを、顧客は望むだろうか。個人情報には全く触れない仕組みのクッキーを使うことを躊躇うのは、Webサイトのマーケティング活用を本当に志向し、サイト訪問ユーザーを大事に考えていることにはならないのではないかと考える。見込み客であるユーザーに、求めている情報を的確に提供しようと考えれば、積極的にクッキーは活用すべきである。
 
 また、ビーコン型のWeb解析ツールをしっかり活用するためにも、当然クッキー利用は前提となるし、サイト内行動ターゲティングやリターゲティング広告も上手に使うべきである。よくクッキー利用を「後を付け回して同じ広告ばかり見せる行動ターゲティングのための手法」として毛嫌いする傾向があるが、実際は違う。
 クッキーでブラウザIDを認識しているからこそ、フリークエンシーをコントロールして、過度に何回も広告を出さないということもできる。利用の範囲を限定して上手に使えば、ユーザーのためになる。

 ヤフーやアマゾン、楽天でアクセスごとにログインしなければならなくなったら、私は面倒だ。勘弁して欲しい。これもクッキーの成せる技であるし、こうしたサイトでの利用が進んでいるので、しっかりクッキー利用のガイドラインを明記して、オプトアウト方法も分かりやすくすれば、ほとんどのユーザーは嫌がることはないと考える。

 クッキーにネガティブな企業は、その会社のお客様には全くならない一部のクッキー嫌いのネットユーザーの反応を恐れるあまり、逆に知らないところでユーザビリティの悪さから顧客を怒らせたり、がっかりさせたりしていることも考えられる。肝心のお得意様に十分な接客ができていないかもしれない。
 そもそもネットマーケティングではすべての人に全く少しも嫌われないようにしようという発想はなじまないのだろう。

 またWebマーケティングがこれほど効果的になるとは思わなかったころのポリシーで、成果がそれほど期待できないからリスクは少しでもないほうがいいという発想だったと思う。しかしWebマーケティングのビジネス成果への期待値はたいへん高くなった。クッキーに関するポリシーは再考すべき時期ではないだろうか。実際、使っていなかったが活用を始めている企業サイトはたくさんある。
 
もちろん、クッキーを使わないという方針もひとつの見識である。それぞれの企業の考え方であり、それ自体を否定しているのではない。誤解のないように・・・。