携帯向けマルチメディア放送


2011年7月にアナログTV波が停波したあとの帯域は、「携帯端末向けマルチメディア放送」に宛がわれる予定になっている。
 現在VHF帯の周波数は地上TV放送で、90MHz~108MHzが1~3chに、170MHz~222MHzが4~12chになっているが、これをVHFローバンド(地方ブロック向け放送)とVHFハイバンド(全国向け放送)に区分して宛がわれる予定だ。
 VHFローバンドは、FM局など積極的に事業展開を模索している。ここではハード会社とソフト会社が分離して事業するようになるかもしれない。
 一方、VHFハイバンドは、NTTドコモとフジテレビなどの「マルチメディア放送企画LLC」、「モバイルメディア企画」(ソフトバンク)のISDB-Tmm方式の2社と、「メディアFLOジャパン企画」(KDDI、クアルコムジャパン)のクアルコム方式の計3社が参入意向を示している。

 今ごろまた「マルチメディア」と聞くと、死語のように思うが、携帯向けの放送によって、通信キャリアも考えようによっては、「放送局」にもなる。野村総研の市場予測データを見ると、モバイルキャリアの携帯電話事業収入は、2008年度の6兆8350億円から2013年には5兆6710億円にまで縮小すると予測されている。

http://www.nri.co.jp/news/2008/081217.html

 つまりモバイルキャリアもメディアコンテンツ事業に参入していかないと国内では成長戦略をとれないことになる。同じ野村総研の市場予測データでは、モバイルコンテンツ市場が2013年に4072億円に、モバイルソリューション市場が7671億円市場に(それぞれ2008年比111.4%、245.8%)と予測されている。オンライン決済市場もモバイルが牽引して2013年に2008円比で205.5%としている。

ラジオ局が起死回生を狙い、キャリアも放送事業収入を狙う携帯端末向けマルチメディア放送。そして拡大するモバイル市場。マーケティングに関わる分野でも「モバイル」が極めて中心的に存在になりつつある。
 だんだん正体を現し始めた「スマートフォン」への関心も手伝って、当分モバイル対応はマーケティングコミュニケーション業界の大きなテーマになるだろう。しかし、以前より端末の買い替えサイクルは確実に長くなった訳で、あまり焦らずに、実態を見極める時間的余裕もないわけではない。