日本の広告費から何を読み取るか


 この時期になると、必ず話題になる電通発表の「日本の広告費」。今年はネット広告が新聞広告を越えて、テレビに次ぐ第2位になったことが注目された。


 インターネット広告だけ、メディア費と制作費に分かれているが、電通の方に聞いたら、テレビも新聞も雑誌も、制作費が含まれているそうだ。いかにもメディア費だけなら、ネットは5448億で、新聞はまだ6739億あるという誤解を生みそうだが、正確な比較はあくまで、ネット7069億対新聞6739億ということらしい。

 新聞は、2001年に1兆2027億あったものが、2009年に6739億ということだから、この8年間で、ほぼ半減したことになる。逆にネットは2001年に735億だったものが、2009年に7069億と約10倍に拡大した。
 テレビが登場して、新聞広告を超えるのに要した年数は20数年だったが、ネット広告は登場して13年で越えた訳だ。それでも、広告市場はユーザーの伸長度に比べてればずっとゆっくりとしている。まだまだメディアユーザー数、接触総時間に比べれば、ネット広告の比率は上がっても良い。それに、ネットは単にコミュニケーション効果だけを目標としているわけではないので、マスメディアとのシェア議論そのものがナンセンスだろう。

 さて、05年からカウントされるようになった「インターネット広告費」の「広告制作費」という項目に注目したい。
 これは、どの範囲をカウントしているのだろうか。バナー制作や、ランディングページ、キャンペーンサイト、ブランドサイトと言った「広告的利用」のサイト及びページ制作ということだろうか。誰か教えていただけると有り難い。
 この範疇もマーケティング利用という大きな括りでみると、もっと大きな市場があるだろうし、もちろん広告宣伝費として支出項目となっている方が少ないと思われる。
 Webサイトは、企業にとって既にビジネスプロセスを支えるものになっている。単にマーケティング、ましてや広告という範疇に収まりきれるものではない。インターネット広告はまさに「広告周辺」に市場があると言っていい。ただそこは「広告」らしい業務領域ではない。
 
 ある出版社の編集の方に、「今は『広告』とか『メディア』とかタイトルにつけると売れないんですよ。」といわれて、広告屋としてはちょっとがっかりしたが、大きな市場はやはりその周辺領域にこそある。ただ、周辺にあるソリューションを、広告コミュニケーションを理解する「頭」が動かすことに価値を見出さなければならない。シュリンクする「日本の広告費」を見るにつけ、そう思う。