メディアもソリューションのひとつ


 日本の広告会社は、「クライアントのために様々なソリューションを提供します。」と云いつつも、一方でメディアのセルサイドの立場(例えばメディアの枠を買い切っている)もあることが、広告主をしてこれを訝しく思わせている。

 私はネット広告の仕組み(アドサーバーによって、コンテンツ配信と広告配信が分離された)によって画期的なことが起こったと思っている。それは、広告を従来よりはるかにバイイングサイドの理屈で実行できる環境になったということである。確かに広告の掲載面としてメディアのスペースを利用するのだが、配信対象はあくまで広告主が配信したいユーザー(ブラウザ)であって、特定の掲載面ではない。インターネットの場合、ひとつのメディア、ビークルそのものに広告価値があるのではなく、それらのユーザーに価値がある。メディアのもつコンテンツの価値はどれだけマーケティング価値のあるユーザーの視聴を獲得できるかという点に収斂する。

 広告主にとって、買っているメディアの価値は、ROIを算出して測ることになる、これは当然である。しかしメディア側からすれば、それはAという広告主にとっての価値であって、それがすべてではない。だから、日本でも欧米のようなアドエクスチャンジが成立して、「売りたい価格」と「買いたい価格」で市場が形成されることで適正価格となるだろう。

 そうなって行くと、広告会社は、どちらをレップするか明確にスタンスを問われることになるだろう。ネット広告もメディア、アドネットワークまではセルサイド、真ん中にアドエクスチェンジがあって、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)などのROI最適化のための第三者配信システムなどはバイサイドということになる。この構造はそのうちネット広告だけのものだけではなくなるだろう。

 メディアバイイングはクライアントに提供するソリューションのひとつである。決して別々ものではない。ただメディアセリングになるとソリューションとの整合性を欠く可能性はある。これからは、セルサイド自身のメディアが、もっとクライアントのソリューションの一環になることを意識することが重要だ。そのためにメディア同士が連携して、相互のソリューション力を高める努力も必要だろう。