「メディアと売るということ」


 「2020年・・・批評」でも書いたことだが、メディアのセルサイドからするとアドマーケットプレイスのような仕組みで「どうぞご自由にお買いください」だけで、すべてが成立するということはない。
 メディアが多様化すると、買う方もたいへんだ。あれもこれも組み合わせないと効果がありませんとか代理店に云われても、予算も限られている。本当だったらいろいろ組み合わさなくても一発でOKとなって欲しいもんだ。
 メディアもソリューションのひとつである。よってメディアサイドはソリューションになるようにメディア商品を加工して、「手売り」することは今まで以上に求められる。従来と違うのは効果を測定できるかようになっているかであって、オンラインで直接買えるかどうかではない。もちろんスモールビジネス用にオンライン取引が成長するのは当然だ。リスティング広告がそれを証明した。
 しかし、それにも限度がある。セルサイドが「売りたいもの」を「買う価値」を創って売る行為はなくならないし、むしろメディア自身が今まで以上にそうしないといけなくなるだろう。

 株式売買や航空券の販売が、證券会社や旅行代理店の人的サービスでなく、オンライン取引に移行しているのは理解できる。しかし広告はそれがどんなにスモールサイズであってもB to B であって、B to C ではない。
 しかし代理店の価値は変わる。基本取次ぎ業としての進行管理の価値がほとんどなくなってしまう。昔は重い鉛の凸版を抱えて入稿しないといけなかったし、フィルムをプリントして、(プロダクションはこのCMのプリント代で儲けていた)確実に局に決められた本数を入れないといけなかったから、それなりに進行管理業務の価値があったが、今後は違う。いらないのだから、そういう人員を雇う利益は出ない。
 代理店は広告主とメディアの間にいることで創出できる価値を再構築しないといけない。広告主の事情を理解しているからこそ、メディアをソリューションにする知恵をメディアにも売らないといけない。

 DSPやRTBといったシステムばかりが取り沙汰されるが、こういう理屈を理解した上で上手に使いこなすことが重要だ。「メディアをソリューションにする」技術が前提で、広告主側(ブランド)の情報とターゲットである消費者の情報をしっかり掴んでいるからこそメディアのプランニングができる。結果として、売り物をメディアといっしょに創って売るか、オンラインシステムでバイイングするかはそれほど問題ではない。