広告会社の経営者像


 今の広告マーケティングとその周辺に起きている激動を理解し、認識して、即、手が打てるかどうかに焦点を当てると、広告会社のトップに求められる能力は半端なものではない。業態そのものが問われる変革期であり、平時ではないからだ。
 会社のトップに立つということに関しては、社員がその人物を社長として結束するという、いわゆる求心力をうんぬんすることが多い。サラリーマン社長であれば尚のこと、社内で認められるかが問われると思われている。
 しかし、果たして求心力なる内側の論理に偏った発想だけで、広告会社なる業態の経営トップが成り立つであろうか。広告会社のトップとして認めるのは社内ではなく、クライアントなのではないだろうか。
 むしろ遠心力が大切なのであって、外に働きかける力があって、クライアントに認められるからこそ、社内的な信頼を持ち得るのだ。
ある意味、広告会社のトップは、その会社のナンバーワン営業マンであり、ナンバーワンプランナーであり、ナンバーワンコンサルタントであり、ナンバーワンプレゼンテーター(これは和製英語)でなければならない。つまり能力でナンバーワンだからトップを張るのだ。
 単なる管理職のトップでは成り立たないのが、広告会社というエージェントであり、情報やコミュニケーションを商売にする業種の経営者の条件だ。情報発信力を持ち、マーケティングコンサルタントとして、クライアントの経営陣と丁々発止できなければ意味がない。コンサルティングファームの代表パートナーのような存在でなければならない。社内マネージメントしかしない社長というのはあり得ない。
 クライアントの経営トップの年齢が若返っているなかで、(外資であれば40代前半のエリートがどんどんトップを張るなかで、)メディアやコミュニケーションの構造的変革を体感的に理解している彼らと伍していく力量が試される。そういうトップの能力しだいで、社員全体のスキルも上がる。人間しかリソースのない広告会社とはそういうものである。